ブータンの湯治場めぐり 

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2月10日

 いまブータンのパロにいる。昨年の夏に初めて訪ねて以来、これで三度目のブータン訪問となる。今回の旅では、今まで行ったことがなかった南部のシェムガン周辺をまわった。
 ブータンにはガサ温泉、チュブ温泉、コマ温泉、ドゥンマン温泉という四大温泉がある。ガサ温泉とチュブ温泉は現在工事中なので、今回はコマ温泉とドゥンマン温泉を取材した。

 ドゥンマン温泉は、シェムガンからさらに南の外国人立ち入り禁止区域にあって、今回は許可をもらって訪ねることができた。本来は日帰りで行くような場所ではないらしく、午前3時に起きて、夜明け前にシェムガンの宿を出発し、激しい悪路を車で進んだ。ちょうど日の出の時刻に温泉へ続く山道の入口に到着し、そこからさらに歩いて数時間かけて、ようやくドゥンマン温泉に到着。日本で言えば、秘湯中の秘湯といったところだろう。
 温泉に近づくと岩のあいだから温かい湯が染み出していて、湯量は豊富である。正真正銘の源泉かけ流しで、熱湯のように熱い風呂もあれば、我慢すればなんとか浸かれる温度の風呂もあった。ただ、全体的に温度が高すぎてのんびり湯に浸かるというわけにはいかず、みんな浴槽の縁に座って、思い出したように湯を浴びては、会話に花を咲かせていた。
 風呂は3つあり、どれも混浴になっている。男性は下着を付けて入り、若い女性はTシャツなどを着て入っていけれど、裸で入る女性も多い。簡易宿泊所のような建物が作られているが、多くの人はテントを張って野宿していた。一族郎党を率いてやってきている人々もいれば家族で小旅行を楽しんでいる人もいて、みんな少なくとも数日間は滞在して帰っていく。長い滞在者だと三ヶ月という人もいた。基本的に、3日、5日、7日と奇数の日数だけ滞在するそうで、それは仏教の教えと関係しているという。
 子どもも多く、湯の中に思いっきりツバを吐きまくっているガキンチョもいたが、誰も注意しないのであった。お湯の沸き出し口からペットボトルに湯をためて、がぶ飲みしている人もいる。ぼくも温泉水を飲ませてもらったが、温泉卵の濃い煮汁を飲んでいるようで、とてもじゃないがノドを通らなかった。

 プナカから北上したところにあるコマ温泉も、車がアクセスできる道路から歩いて数時間の場所にある。ここも混浴で風呂が3つあったが、ドゥンマン温泉とは逆に、湯の温度がぬるくて、じっとしていると凍える。
 コマ温泉に通う人々は温泉の強い効能を信じていて、ここは関節痛、あそこは皮膚病に効く、などとそれぞれの風呂の特徴を教えてくれる。ぼくには違いがよくわからなかったが、ぬるい湯に長く浸かっていると頭がくらくらしたので、きっと何らかの作用があるのだろう。
 ブータンの温泉は「ちょっと立ち寄る」というよりは完全に湯治専門で、温泉とはそもそもこういうものなのだろう、と認識を新たにした。というわけで、今回のブータン滞在では温泉に浸かりながら、のんびりしている。その後はプナカの周辺をまわり、もうすぐ帰国する予定だ。