プジャ。祈りよ、空より高く。 

4月15日

 朝7時、エベレストBCのテント内にて起床、おしぼりとミルクティー。

 8時、朝食。ちゃんとしたソーセージが出た。

 9時頃からプジャがはじまった。登山の安全を祈願する。祭壇が作られ、そこに各自、大切な道具などを供えて、祈りを込めてもらう。ぼくはもらったヤクのペンダントを祭壇の上に置いた。

 お経を唱えるプルバの後ろ姿を、ひたすら眺めた。プルバはエベレストに19回登っている。世界記録はアパ・シェルパの21回登頂。今春、プルバはルート工作と本番で、少なくとも二回はエベレストに登るだろうから、順調に行けば、世界記録タイか、それを越すことになるだろう。チベット仏教を心の拠り所にして山に敬意をもって接するこの男は、しかし、そんな記録の樹立に微塵も興味を示さないだろう。

 12時、早めの昼食。HIMEXのエベレストチームが、順応のためロブチェBCへと下っていった。

 午後、寒くなる。テントのなかで1994年1月3日にOAされたNHKスペシャル『チベット大河紀行~伝説と祈りの源流へ~』をDVDで観た。とても面白い。ヤルツァンポ川の源流を目指して過酷な取材に身を投じるクルーに頭が下がる。クレジットには村口徳行さんの名前もあり、この頃から村口さんはヒマラヤに通っていたんだなあ、と思う。川の源流に強く興味をもつ。馬の口。牛の口。一年に一度、祭りでかかげられる生命の樹。

 ツアンパをこねて食べる巡礼者の姿をディスプレイの中で見ながら、プルバを思い出す。プルバもクムジュンの家の台所で、ツアンパを食べていた。バター茶は栄養ばかりでなく、唇の乾燥を防ぐ役目もあるそうだ。巡礼者に施しを与えることは徳を積むことだといいながら、旅人=巡礼者に優しく接するチベットの人たちの姿が、いい。

 プジャが終わり、いよいよ本格的な登攀活動のはじまりだ。