夏の終わり。 

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 サハリンから帰国した。

 最後の宿泊地であるコルサコフ(旧大泊)では沈没船などを撮影しつつ、南下した。近くに天然ガスの基地があるプリーゴロドノエ(旧女麗村)や、オジョルスキー(旧長浜村)に立ち寄り、最終的にはアニワ湾沿いのノビコボ(旧弥満)とそのさらに奥にある美田炭鉱の跡地まで足をのばした。

 ノビコボは寂れた村だった。弱冠21歳のガイド・サーシャは、たどたどしい日本語で、その村を見ながら「神にも見捨てられた土地ですね」と言った。人は住んでいるのだが、閑散としていて、荒野と呼んでも差し支えないような場所にある。美田炭鉱跡は、露天掘りの炭鉱で、今は廃墟になっていた。少し奥に入り込むと、エメラルドブルーの美しい湖があった。泳ぎたくなるのをこらえながら、ぼくと奈良さんのサハリン旅行は、そこで一応の区切りをみた。

 稚内空港で奈良さんと別れ、ぼくは羽田空港に戻って、そこから飛行機を乗り継ぎ、今は富山県にいる。利賀村で、鈴木忠志さん率いるSCOTの演劇を観るためである。去年も夏の終わりは、利賀村で迎えた。利賀の野外劇場に打ち上がる花火を観て、人心地を取り戻す。磯崎新さんらがやってきて、最後に鏡割りをしていた。いいなあ、利賀村。

 スケジュールが恐ろしいことになっていて、休む間もなく、月曜日から大友良英さんや開沼博さんと一緒にフィリピンへ向かう。8月後半は北に行き、本州の真ん中に行き、そして今度は南に行かねばならない。詰め込みすぎのスケジュールはよくないと思いつつ、今年もあっというまに夏が去って行った……。

 自分の本ではないが、以下、関わった本のご紹介。

 平凡社のコロナ・ブックスから刊行された『宮本常一と写真』には、山口県の周防大島で撮影した写真と文章を寄稿した。今は作家としても活躍している編集者の畑中さんが腕をふるった一冊。宮本常一の本は数多あるものの、彼の写真に焦点をあてた本は少ない。写真集としても、面白いものになったと思う。

 赤坂憲雄さんの『ゴジラとナウシカ 海の彼方より訪れしものたち』(イースト・プレス)の表紙に、自分の写真が使われている。その名の通り、赤坂さんによるゴジラとナウシカに関する論考で、装丁は今まで色々な仕事を一緒にしてきた祖父江慎さん。写真は、トカラ列島で皆既日食に遭遇した際、海岸で撮影したもの。

 美術手帖の9月号増刊として発売された『国東半島芸術祭 公式ガイドブック』にも表紙はじめ、たくさんの写真が使用されている。10月からはじまる国東半島芸術祭を旅する際には必読の一冊だろう。

 さて、利賀村で温泉に入って疲れを癒やし、次はフィリピンだ。南の島から果たしてブログを更新できるだろうか……。

*写真は、サハリンのドリンスクの団地の一室で猫と戯れる奈良美智さん。子どもの頃は獣医になりたかったそうだ。旅の最中、いろんな話をしてくれたが、奈良さんは人柄もエピソードも、とびきり面白いです。笑。