駆け込み寺。

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7月23日
BC

 足を骨折した日本人女性は無事にヘリでスカルドに搬送されたようだが、もう一人の日本人女性はK2BCからブロードピークBCへ徒歩移動した後、その日はヘリに乗れずにブロードピークBCで一泊し、本日ようやくヘリに乗れた。ツアーオペレーターがリエゾンオフィサーに下山の旨を伝えずにK2BCを出てしまったことがヘリに乗れなかった原因のようだが、何ともパキスタンのこうした制度はややこしい。ネパールだったら、こんな煩わしいことはないのだが。

 お隣のマイクホーン隊が、24日25日のごく小さなウィンドウを狙って、サミットプッシュに入った。結果は明日わかる。ブロードピークのほうでもプッシュに入った隊があるようだ。この小さなウィンドウに賭けるのはリスクが大きすぎるということで、HIMEX隊は静観の構え。南南東リブもノーマルルートのアブルッツィ稜も、キャンプ3より上はまだルートができておらず、マイクホーンたちはロープなし、フリーで頂上まで行くというのだが、いくらなんでも難しすぎるだろう。雪が適度についていればいいが、氷だった場合はたった一つのミスでアウト(=死)だし、雪がつきすぎている場合も厳しい。

 いずれにせよ、今季はまだK2にしろブロードピークにしろ登頂者は出ていない。自分の体調自体は絶好調のところまで持ち上がっている。それだけに、好天を待ち続けるしかない、というのはなかなかつらい。

 夜、ブロードピークのC1近くで転倒し頭に裂傷を負ったニュージーランド人がHIMEX隊のBCに運ばれてきた。ここ最近、HIMEXのBCはけが人やわけのわからないトレッカーの駆け込み寺になっていて、やれメールが来てるはずだからチェックさせてくれとか、天気の情報を教えてほしいとか、そんなのばかりだ。

 頭に穴があいて血がだらだら流れてるニュージーランド人男性は、HIMEX隊の医者を頼ってブロードピークBCから仲間と歩いてきたらしく、夕食後の遅い時間に突然現れた。

 ラッセルもドクターのディックもニュージーランド人なので、同郷のよしみで即オペがはじまった。ダイニングテントはいつもなら食後に皆が談笑している時間だが、机の上がすべて片づけられ、頭の傷を縫う処置が行われた。

 頭に裂傷を負った男と、彼の連れ添いの仲間二人は、今日はHIMEXのダイニングテントに泊まるらしい。

 これを読んでいる方々のなかで、いつか8000メートル峰に登ろうとしている方がいたら、参加しようとしている隊に同行医師がいるかどうか、事前にチェックした方がいい。医者だけではない。自前でルートを作れるだけの長大なロープ類、スクリューやピトン、スノーバーなどを持って行くのかどうかもチェックするのが吉。

 参加費が安い隊は、それなりの理由がある。参加費の相場は、HIMEXやIMG、カリコプラなどを参考にすればいい。それらより安ければ何かが削られているし、それより高ければなぜ高いのかきちんと主催者に尋ねて納得の上で参加を。

 ダイニングテントの外に出ると、三日月が浮かんでいた。

 今日も一日が終わろうとしている。

*写真は、夜、ダイニングテント内で、ニュージーランド人の頭の傷を縫うディック医師(右)。