『奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」』ジョン・ガイガー 

  • 『奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」』
  • ジョン・ガイガー(著)/伊豆原 弓・(訳)
  • 新潮社


それまでの人類が到達した最高地点で、「まさに生と死の境界」にしばし一人佇んだ。スマイスはのちに語っている。「エベレストの最後の一〇〇〇フィートは、生身の人間でどうにかなるものではない」
 それからスマイスは広い岩棚までくだり、休憩をとった。
 
 岩棚にたどり着いたとき、何か食べなければこの先力が出ないと思った。そのとき持っていたのは、ケンダル・ミントケーキが一枚だけだった。それをポケットから取り出し、新潮に二つに割り、片方を手に持って「同行者」に渡そうとふり向いた。

 シプトンと別れてから奮闘しているあいだじゅう、スマイスには「誰かがついてくるような……妙な感覚」があった。そのことに彼自身とまどいを感じ、公式記録にこの現象をかいたときも、その後の遠征隊長のヒュー・ラトレッジの求めに応じて説明したときも「非常に気後れした」という。

P56 8行目~

恐ろしい話だ。スマイスの言う「広い岩棚」というのはサウスコルのことだろう。出会いたくないが、出会ってみたくもあるサードマン・・・。




メスナーの場合、サードマンが一緒にいたことは「孤独感を抑えるための心理的力になった:……身体は仲間を作る方法を生み出すのだ」という。これが喪失効果である。私たちがいかに社会的な動物であるかを示す究極の例である。私たちは最も寂しくて困っているときに、一人ではないと自分を安心させ、誰かとともにいると感じる手段がある。それが生と死を分けるのだ。

P158 うしろから4行目~