• 20090219

    石川直樹 連続トーク・セッション vol.1 その4

 
先日1月9日、ジュンク堂新宿店で行われた「石川直樹連続トーク・セッションvol.1」。
ここでは全4回に渡ってその模様を掲載していきます。
今回は、お二人が山に登る理由を語ります。

 
 

第4回 なんで山に登るのか?

 
 
石川:華恵ちゃんは中国武術部だったんだね。
 
華恵:あーきましたね、その話が(笑)。でもひとつ良かったのは中国武術でも必ず柔軟をしますし、昔はバレエもやっていたので、足が縦にはいくんですよ。
 
石川:縦にってどういうこと? 足が縦にぱかんと開くってこと?
 
華恵:はい、横にはちょっといかないんですけど。
 
石川:羨ましいなぁ。
 
華恵:クライミングのとき一歩が大きく出せるのですごい有利です。
 
石川:そうか、華恵ちゃんはクライミングもやってるんだよね。クラミングは体が柔らかい人が圧倒的に有利だからね。とにかく色々な体の動きを要求されるから。僕もクライミングを習いはじめたときはお風呂で柔軟やったりしてたなぁ。最近はクライミング行ってる?
 
華恵:最近はなかなか行けてないんです。
 
石川:クライミングは野外でやってたの?
 
華恵:はい、はじめてやったのが野外でした。屋内ならやってる人も多いし、都内でも施設がいっぱいあるから、夜おそい時間帯でも行けて便利だって聞いたんですけど。
最初4回ぐらい野外でやって、そのあと一度屋内でやってみたんですよ。そしたら力の使い方が全然違って。岩の感触も違った。外でやったときは、ちょっと湿ってるところがあれば、すごい乾いているところもある。人工のものだと、岩のどこを持つかが決まってるんですよ。でも自然の岩だとボコボコしてるので、どうつかむのかっていうのを頭で考えて、バランスをとって登っていく。
 
石川:クライミングの先生からも言われてると思うけど、手じゃなくて足で登るんだよね。
 
華恵:そうなんですよ。よじ登りたいから手ばっかり上に伸ばしちゃうんですけど、「階段を登るイメージで」って言われて。ありえないだろって思ったんですけど(笑)、今は簡単な所ならところどころに足を乗っけて階段みたいに登れる。
 
石川:それって後ですごい役に立つよ。登山する上でクライミングの経験があるとないとでは全然違うんだよね。
 
華恵:高い山になると特に岩場が多いですからね。
 
石川:華恵ちゃんは山を登るための技術として、クライミングを教えてもらってるんだね。
 
華恵:先生から最初に言われたことなんですけど、「スポーツとしてやりたいなら違う先生を紹介する。
僕が基本的に教えているのは登山の幅を広げるためのクライミングだから」って。
 
石川:僕もカヌーとかスキーとか自転車とかいろいろやるんだけど、どれもスポーツとしてやってるわけじゃないんだ。この川を渡るためにはカヌーに乗んなきゃ渡れないからカヌーの技術を学ぶ、という感じで。
山登ってるだけでアドレナリン出て楽しい! っていう人もいるし、カヌーで白波をガーッと行ってるとき嬉しさ爆発! みたいな人もいるんだけど、僕は全然そういうのはないんだよね。あくまで目的地に行くための旅の手段だから。
 
華恵:これはクラインミングやってるからなのか分からないんですけど、上に行きたいという気持ちが強いんですよね。基本的に山ってジグザグに登山道があるじゃないですか。なのに私は垂直に道なき道を登って行こうとしたことがあって。
 
石川:それは登山家向きかも(笑)。
 
華恵:わたし高い山にはあまり行けてないんですけど、そのかわり低山には割と行ってるんです。一回御岳山で道に迷ったことがあって。低山でもなめてかかるとほんとに恐い目にあうなって思いました。
*御岳山:東京都青梅市にある標高929mの山。
 
石川:それ、華恵ちゃんのエッセイにも書いてあったよね。持っていった地図が詳しいやつじゃなかったんでしょ?
*華恵ちゃんのエッセイ:現在雑誌「山と渓谷」で隔月連載中のエッセイ、「華恵、山に行く。」のことです。
 
華恵:そうなんです。でもちゃんとした地図を持って行っても、道を間違えることがあるんですよね。というか、登山道が見えなくなることがあるんですよ。
 
石川:え、不思議な事を言うね。
 
華恵:「こっち行けるんじゃないか?」と思っちゃうんです。なにかが呼んでるとか、そんなんじゃないと思うんですけど。
 
石川:それは慣れだと思うよ。日本の山って道の作り方が決まってるし。あと三回か四回山に登ったら、道に迷うこともなくなるんじゃないかな。
 

こちらは冬期の富士山の写真。冬期の富士山には登山道なんてあるんでしょうか?(写真は写真集『Mt.Fuji』より)
 
石川:華恵ちゃんは、山のどこが好き?
 
華恵:んー。山に登ってていいなぁって思うポイントは、低い山と高い山では違うと思うんです。低山は人と一緒にわいわい行くのが好きで、普段と違う人の表情が見えるのが好きなんです。
高い山は、登頂できると「自分はここまで登ったんだな」っていうのが、その後もずうっと自分の中に残る。普段なかなか、そういうことないですよね。ずーっと自分の中で自信として残って、しかも誰でも見ることが出来る存在。
山はそれこそ噴火とかしない限りはなくならないから。そういう存在があるのがすごく嬉しい。あと、「もうムリムリムリ」って言い続けて頂上に着いたってこと多いんですけど、その時に「あー、無理じゃなかったんだ」と思うことが、特別なことだと感じるんです。
 
石川:達成感っていうのはやっぱりあるよね。僕はずっと街のなかにいると、山とか川とか、森とか海とか、そういうところに行きたくなることがあるんだよね。山にちょっと登っただけでも、気持ちが晴れていく。
 
華恵:石川さんが街中にいるときは、旅の途中って感じなんですか?
それとも、日常に戻っちゃったって感じですか?
 
石川:いやー、旅と日常はあんまり区別がない。自分の家から外にでたら、旅してるときと同じ感覚。海外にいても日本にいても、あんまり変わんない。
山を、非日常の空間とかそんな風に言う人もいる。確かに、日常的な空間が山にあるわけじゃないんだけど、でも山に行って自分自身のなにかが劇的に変るわけでもない。変らない自分が色んなところ動き回っているだけでしょ。だから僕はどこにいても旅に出ているような感覚だし、それと同時に、どこにいても旅に出てないような感覚もあるかもしれない。ヒマラヤ行ってもそこには、いま生きているという日常があるような気がするんだよ。
 

 
石川:今年一年は山から離れなきゃいけないよね。
 
華恵:うーん少し……高校三年になるので受験勉強を頑張ります。
 
石川:ほんとは夏くらいに富士山に行けたらいいんだけど…。
 
華恵:え!? 行きたい!
 
石川:軽く誘ってみるけども、まあ無理せず(笑)。
 
華恵:それまで頑張りますので(笑)。
 
 
 
登頂した山を、いつまでも目に見える形で残る自信として捉えている華恵さんの考え方は、目から鱗でした。なるほど!
 
今回で、「石川直樹連続トーク・セッション vol.1」の連載は終了です。
そして「石川直樹連続トーク・セッション」はまだまだ続いていきます。
 
次回「石川直樹連続トーク・セッション vol.2」は3月20日開催予定です!
ゲストはサイバイバル登山家(!)として知られる、服部文祥さんです。
もちろん、トークセッションの模様は当サイトで掲載していきます。
御期待下さい。
 
「石川直樹連続トーク・セッション vol.2」の詳細
 

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