• 20090529

    石川直樹連続トークセッションvol.2 その4

 
3月20日にジュンク堂新宿店で行われた、
石川直樹連続トークセッションvol.2。
ここでは全5回にわたってその模様を掲載していきます。

 

石川直樹連続トークセッションと言いつつ、肝心の石川さんがゲストの服部さんを残して、トークセッションの途中で北海道へ…。
今回のトークセッションvol.2は急遽、服部さんのトークショーへと変りそのまま続行!ということになりました。
今回はそのトークショーの模様をお送り致します。
リトルモアの編集部員・田中が、服部さんのお相手を務めさせていただきました。
 

第4回 サバイバル登山のはなし(上)

 
 
田中:せっかく服部さんお越しいただいたので、もう少しお話を伺いたいと思います。
石川さんとのお話だと、わりと哲学的で本質的なお話が多かったので、この場では、服部さんが具体的にどんな登山をしているのかってことをお聞きしようと思います。
 
服部:そうですね…。えっと、まず僕の登山では電気で動くものは持って行きません。というのも、電池で動くものは、僕自身が作り出せない物なので、そういうものは持っていきたくないなあ、と思っているからです。なので、ラジオ・時計・ライト等は持っていきません。ラジオも持って行かないで、天気予報も聞かずに1~2週間山に籠るなんていうのは、普通で考えると無謀登山ということになります。
あと、コンロと燃料も持っていきません。食料として持っていくのは、お米と調味料だけです。あとは山菜を採ったり、岩魚を釣ったりしながら長く山を歩く、というのが僕のやっている登山です。
 
田中:この写真は、実際にサバイバル登山中に食べられているご飯ですか?
 

(撮影・丸山剛)
 
服部:(写真のなかの箸を指して)箸はちょっとやりすぎなんですけど、この時は忘れてたんで、こういう箸を使ってるんですが、普段は箸は持って行きます。
 
田中:お鍋はどうですか?
 
服部:鍋も持っていきます。
それとですね、昔は白米を持っていってたんですが、今は玄米を持っていっています。僕のやってる登山は基本的に食料が無いという厳しい日々を過ごすものなんですが、山から降りてきたらその反動でガツガツ食べちゃうんです。それでリバウンドがけっこうキツいんです。
ただ、玄米にするとそういうリバウンドはかなり少なくなります。
お勧めです!
 
田中:(写真のなかの料理のひとつを指して)これは?
 
服部:えーと、僕は胡麻油も持っていくんですけど、これはウドを塩とコショウと胡麻油で炒めたものですね。ウドの胡麻油炒めは、普通に採れる山菜の中では一位二位を争う美味しい食べ物です。
最初は僕は油を持っていっていなかったんですけど、ネパールのシェルパ族の人たちが油を持って山に入るのを見て、「あぁ、油は許可しよう」ってことになりました(笑)。
 
田中:油くらいは(笑)。
 
服部:自分で自分を許してしまいました。
あと、味噌も持っていくんですけど、(写真を見ながら)これはみそ汁にアザミが入っています。
岩魚は前の日に釣ったのを燻製にしたものです。
釣れなかったり釣る時間がなかったり、イワナがいないような場所の場合は、こういう風に燻製にしておいたものを食べています。
イワナが釣れた日は、すぐにお刺身にして食べます。内蔵はみそ汁に入れたりして、皮も塩コショウして焚き火の近くに吊るしておいたりするとスナックみたいになって美味しいんです。
 
田中:今まで、魚やウドがまったくとれなくて苦労されたことはありますか?
 
服部:あります。
皆さん覚えていらっしゃるかどうか分りませんが、2006年に天竜川が大氾濫したことがあったんです。その時に北アルプスの林道が壊れたんです。林道が壊れると釣り師が渓に入れないんですよ。釣り師が入れないということは、僕は一人で岩魚を釣り放題だと思ったんです。「よしよし、今年の夏は北アルプスでイワナパーティだ」と。
ところがですね、岩魚がいないんですね。
岩魚も林道と一緒に流れてしまっていたという…。
 
田中:あぁ…。
 
服部:困ったなぁと思いながら登山を続けていくんですが、どこの渓に行っても岩魚がいないんですよ。それである日、ワサビが流れてきているのを発見して。「あっワサビだ!」と、ワサビを取ってしょうゆ漬けにして、それを毎朝毎晩おかずにしてました。そしたら4日目の夜に、自分のザックの中からふりかけが出てくる夢を見ました。
 
田中:ふりかけ(笑)
 
服部:その翌々日には黒部に下りたんですが、黒部も大雨の影響ですごい水だったんです。全然ダメそうなんですけど、とりあえず釣りをしていたらガクーン! って、でかいのがかかったんですよ。でもなんか動きが変なんですね。でかいんですけど、動きがちょっと変だなぁって思いながら様子を見てたら、「すれ」だったんです。
 
田中:すれ?
 
服部:「すれ」っていうのは魚の体に針がかかっている状態なんです。
僕は「すれ」で釣れた魚は全部かならず逃がすようにしているんです。
それは、釣った魚ではなくて、釣れちゃった魚だから。
 
田中:じゃあその岩魚は…。
 
服部:迷いました。迷いましたけど…、まぁいいかって思ったんですよ。
その瞬間、不思議と笑いがこみ上げてきました。
 
田中:(笑)
 
服部:それ以外に食べるものがなくて困ったっていうことはほとんどないですね。やっぱり長く続けるうちに、山菜に関してもキノコに関しても、知識が増えてきていますし、岩魚釣りに関しては技術がかなり上がってきましたから。
 
 
続きます。
 


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