近藤良平 プロフィール
東京生まれ、ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。振付家・ダンサー。男性のみ学ラン姿でダンス・映像・コントなどを展開する舞台で人気のダンスカンパニー「コンドルズ」主宰。
アジア、中南米をはじめ数多くの海外公演もこなす。第四回朝日舞台芸術賞・寺山修司賞を受賞。テレビやミュージシャンのPVなどで振付家として活躍する一方、横浜国立大学、立教大学などで非常勤講師としてダンスの指導もしている。また、NODA・MAP公演『THE BEE』で役者としてデビュー。バンド「THE CONDORS」ではベースを担当。
 

第17回:しぐさの数々

2010年09月02日

 
 生まれてすぐに赤ちゃんは泣き出します。
 元気よく「オギャー」と泣きつつも、その時、生まれて初めて手足を思いっきり伸ばすのです。「私は、とっても元気ですよ」という最初の「しぐさ」とも言えます。我々は 大人になっても目覚めの時など「オギャー」とは言いませんが「フアー」とか言いながら手足を伸ばして目覚めを拡張したりします。「目の瞬き」などはまさしく反射として捉えやすいですが、面白い時にパチンと手を叩いたり、スポーツでゴールを外した時に天を仰いだり、困った時に眉間のしわを寄せたりなど、そのあたりの動きになると「反射」なのか「しぐさ」なのかは不明であります。
 先天的か後天的かが見極めづらい動き、例えば相手に対して「かっー!」となった時、平手うちするかグーで殴るかは分りません。時間をかけて考えると、ここは 「平手うちの方が有効的だ」などと思いつきますが、その場合は叩くこと自体をやめることになるでしょう。「つい手が出てしまった」というシチュエーションは非常に興味深いのです。
 さて日常のしぐさは、もう数えきれないほど溢れています。そしてほとんどの日常のしぐさは、目的をもって行われます。それなので余計な心配をせずとも、しぐさを使うことができます。もし突然に「やさしい気持ちのしぐさをしてください」と言われても、目的がなければ難しいです。また「伝えたい」という強い気持ちがある時にもしぐさは発揮します。これは「表現」という部分にも関わってくるので、より複雑になってきます。
「身振り、手振り、振る舞い」と言いますが、これはニュアンスを捉えたステキな日本語だと思います。からだで伝えるしぐさの数々は、なんの境も前触れもなく、「舞い」の領域にも入り込んでいるのです。よく落語などでは、扇子を杯に見立てたりします。この「見立て」もしぐさの重要なアイテムであります。声まねが上手な人と同じように、しぐさの真似が上手な人は、表現の幅があるかと思います。
 昔は日常にあって現在ではほとんど見かけなくなってしまうような「しぐさ」もたくさんあります。「そろばん」「ダイヤル式電話」「剣玉」など昭和もしくはそれ以前の動きは、そのものが無くなるのと同時に、しぐさもなくなっていきます。逆に「メール送信」みたいな親指動作などは、新しいしぐさであります。「エアーギター」「エアードラム」「生まれたての子鹿」など今までも動きの延長として面白いものが登場します。まさしく「しぐさごっこ」なのです。
 一度「エアーな一日」と題して自分のとった行動、朝の起床からトイレに行って……などすべてを辿りながら一日をエアーで再現すると、なにか面白いことが見つかるかもしれません。でも一人でやるとさみしいので友達や同僚とやってみてください。