第4回:回り始めるとヒトは止まらない

2009年09月07日

 さあみなさん 気分よく回ってますか。
「ぐるぐる回る」と「くるくる回る」はどちらもかなり回っている気がしますが、くるくるの方が小振りで軽くて、ぐるぐるは酔うほど回転しているイメージがあります。回っている様子の微妙な違いで言葉を使い分ける、日本人の語感は偉大であります。
 子どもたちを観察していると、「歩く」や「走る」などと同列のところで、自然と「回る」を身につけている気がします。僕個人的には、「道は真っすぐ歩きましょう」と言うならば、「ここでは回りながら進みましょう」的なこともあってもよろしいくらい「回る」は全国レベルで捉えたいものです。
 トンネルのような穴があると無性に入りたくなります。そして、トンネルの中に入ると、これまた無性に外に出たくなります。トンネルに入って出口のない状態が、「回り続ける」イメージであります。
 こどもに、四つん這いになってもらい「股くぐりごっこ」をすると、永遠にやめません。周り続けます。「回る」や「周る」は、一種独特の覚醒を伴います。日常世界から離脱するもっとも安易ですばらしい方法かもしれません。
 動物園のサル舍やクマ舍を見るとしょっちゅう楽しげに回っています。サッカーでゴールを決めた後、得点者と仲間は興奮して回っています。忌野清志郎もジェームス・ブラウンもマイケル・ジャクソンも、突然回りはじめます。社交ダンスのワルツの踊りを上空から俯瞰で見ると、きれいに円運動しています。まるで色んな傘を広げて、くるくる回っているかのようです。みんな、楽しいときは回りたくなるし、回っていると楽しくなるのです。
 ラジオ体操にあるような腕を上空に広げる深呼吸のポーズがありますが、これからは、そのついでに「くるくる」回って下さい。目が回ったら楽しいし、何よりそれが生きてる証拠です。
「回る」と縁が深いのは、「円」です。子どもの頃は紙があると、どちらかといえば円より三角や星をたくさん描いていた気がします。何かとがったものを欲していたのでしょう。今はどちらかというと円を好みます。不思議ですねえ。
 人生をよく円で捉えたりしますが、それも面白いことです。自分は今、思いの外バカでかい円を描きはじめていて、当分円が描ききれない気がします。それもデコボコの線で、始点と終点が結局出会わないのです。
 ある映画の中で、主人公が砂漠のようにどこを見ても同じような風景が続く場所に来てしまい、どちらの方向に行くべきか分からず途方に暮れた末、くるくるっと回ってたまたま向いた方向にふらふら旅立ってゆく――そんなシーンがありましたが、いいですねえ。最高です。
 もし知らない町で路頭に迷ったら、くるくるまわって進みましょう。ただ真っすぐと歩くだけでは、空間は生まれません。横に逸れた時、そこにぶわっと厚みのある空間が生まれます。その思い切りには「ぐるぐる」が必要なのです。まあ子どもの頃の、家から学校までの間の「道草」のようなものです。

プロフィール

近藤良平

東京生まれ、ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。振付家・ダンサー。男性のみ学ラン姿でダンス・映像・コントなどを展開する舞台で人気のダンスカンパニー「コンドルズ」主宰。
アジア、中南米をはじめ数多くの海外公演もこなす。第四回朝日舞台芸術賞・寺山修司賞を受賞。テレビやミュージシャンのPVなどで振付家として活躍する一方、横浜国立大学、立教大学などで非常勤講師としてダンスの指導もしている。また、NODA・MAP公演『THE BEE』で役者としてデビュー。バンド「THE CONDORS」ではベースを担当。

ひとこと・ふたこと