第9回:しゃべること うたうこと

2009年11月30日

 学生時代、アパートでひとり暮らしをしている頃は部屋にテレビがなく、音が鳴るものはラジオが1台、あとはギター1台だけでした。
 ラジオは電池が切れると音が鳴らなくなるので、ギターを弾いている時以外は随分と静かな生活でした。あの頃は、2日間くらい全くことばを発しない時もあったと思います。
 しかし、全くしゃべらないのはつらいことです。しゃべりすぎるのもやっかいですが、人間はしゃべることで人間らしくなります。そして、しゃべらいないと「喜怒哀楽」が生まれてこない気もします。「え〜うっそ〜」「まいったまいった」でもなんでもいいのです。そうやって感情をことばで表現することで表情筋も発達していきます。
 歌はどうでしょうか。よく漫画などでは、「ルンルンルン!」と鼻歌を歌ったりしています。実際の生活では今やめったに見ない光景です。歌うことは、日常の話すこととは随分と違う働きをします。歌うだけなら一人でも可能です。鼻歌でも口笛でも良いです。人前で話すのは嫌いでも、歌うのは大好きという人たちはたくさんいます。今ではカラオケという画期的な場所まであります。
 しかし、しゃべるのが得意な人が歌うのが得意とは限りません。歌うことは身近でありながら、特別な出来事なのです。太古、人は「しゃべる」ことをせずに「うたう」ように会話をしていたような気がします。なぜなら感情に直結しているからです。
 しかし、現在の「歌う」は随分と生活からかけ離れている気がします。もっと、みんな生活の中で歌ってほしいですね。日々の生活をミュージカルにするのです。喉のおかげで我々は声が出ますが、人間ほど多種多様な声を出す動物はいないでしょう。おまけに美しい声もダミ声も、色々出せます。
 僕も歌うのはそんなに得意ではありませんが、スポーツジムでからだの筋肉を鍛えるのと一緒で、お腹から声を出すなど日々のトレーニングを心がけることが大切でしょう。自分はこんな声も出せるんだ、と改めて気づく、なんてこともあるかもしれません。
「困った時には、歌いましょう」 。今日の格言です。

プロフィール

近藤良平

東京生まれ、ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。振付家・ダンサー。男性のみ学ラン姿でダンス・映像・コントなどを展開する舞台で人気のダンスカンパニー「コンドルズ」主宰。
アジア、中南米をはじめ数多くの海外公演もこなす。第四回朝日舞台芸術賞・寺山修司賞を受賞。テレビやミュージシャンのPVなどで振付家として活躍する一方、横浜国立大学、立教大学などで非常勤講師としてダンスの指導もしている。また、NODA・MAP公演『THE BEE』で役者としてデビュー。バンド「THE CONDORS」ではベースを担当。

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