株式会社 家族2

プレゼント

 

 誕生日が近づくと私と妹は母に何か欲しいものはないかと聞くけれど、片手を挙げ目を閉じて「自由」と答える母を見て、それ以上どんな自由が欲しいのかと思う。
 母の誕生日は年が明けてすぐなので、正月を実家で過ごす私と妹、そしていつも家に居る父とで家族全員が揃う。プレゼントに何かを買ったり外食したりする場合、父はあまりお金を持っていないので、私と妹でお金を出し合い三人で割ったことにして父の面子を立てているが、父は何も思っていないだろう。父が母に何かを買って来たところを見たことがないが、母は「お父さんのセンスで服もろても私、絶対着いひんで」と言っている。でも父は私と妹に靴下を買ってきてくれたことがあって、それらは往年の鶴瓶みたいな男の子の刺繍が入っていたり椎茸のようなワンポイントが付いたものだったので、バイヤーとしてのセンスは光るものがあると思う。それ以後、父にいくらかのお金を渡して靴下を買いに行ってもらったが外れはなく、喜ぶ私たちを見て「どうや、かわいらしんちゃうか」と自分の審美眼に自信を持ち始めていた。靴下には風船や、見たこともない野菜の刺繍が入っていた。
 子供の頃のクリスマスの朝、枕元にサンタクロースの小さい赤いブーツが置いてあって、中に金平糖と傘の形のチョコレートが入っていた。私はサンタクロースが本当にいると思ってびっくりしていたが、「夜中に父さんが置いてるとこ私見たで」と妹が言ったとき父は黙っていた。次の年のクリスマスの朝も、枕元には小さな赤いブーツがあり、中身も同じものだった。あまりにも無謀な欲しいものリストを書いた紙を枕元に置き、寝ずに布団から見張っていた妹は、それを置く父を薄目で見たときどう思ったのだろう。赤いブーツの高さは5センチくらいだった。
 中のお菓子を食べたあと、私たちはその赤いブーツを猫の前足に履かせて、歩きにくい様子を楽しんだ。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

 

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!