株式会社 家族2

ピヨ

 

 大阪で私が店に立っていたころ、荷物を集配にきてくれる配送屋さんがいた。忙しそうに走ってやってくるその男性と会話しているような余裕もなかったけれど、いつも明るくて感じのいい人だった。

 その人が同性愛者たちのハッテンバからほくほくした顔で出てくるところを見た私は見てはならないものを見てしまった気がしていたが、カミングアウトされる機会があって、そのあとはまるで女同士のようによく喋り、けれどおっさんはやっぱりおっさんで重いダンボールを男らしくかついで走って階段を下りて行った。私はその人にピヨというあだなをつけてそう呼んだ。

 12月も半ばになったころ、クリスマスも仕事なんだもんと少々不満げだったピヨの顔を思い出してあれこれプレゼントを選んだ。クリスマス当日、プレゼントたちをきれいに包装して集配センターに電話をかけるとピヨから折り返しの電話があり、今日は忙しいから明日じゃ駄目かと聞かれた。店の前に置いておくからどうか今日中に集荷に来てもらえないかと私が無理を言うと、ピヨは仕方ないねと承諾してくれた。

 閉店時間になり店に鍵をかけると、私は見つからないように階段の影に隠れてピヨが走ってくるのを待った。ぶつぶつ言いながら階段を上がってきたピヨは、店のドアの前に置かれた箱を見て立っていた。それから“ピヨへ”と書いたグリーティングカードを見つけて開くと、両手で顔を覆ってその場にしゃがみこんだ。私だってクリスマスも仕事。そのうえおっさんに驚きのプレゼントまで仕込んでいる。私にもあんなかわいい石けんや、暖かそうな靴下をくれる人がいたらいいなと思いながら、でもまさか泣くとは思わなかった私は結局声をかけられないままだった。階段の影から泣くおっさんを見守る私のクリスマスは変態じみていた。

 私もピヨも仕事で東京へ出るのが同じ時期になりそうやねと言いながら、ピヨは私より半年早く東京へ行った。8年経った今もピヨは東京の同じ居酒屋で働いている。

 初めてその店へ行ったとき、ピヨは楽しそうに働いていて“ここは全員がこっち系だから”と私に耳打ちすると、昔うちにいた猫のピヨそっくりの顔でにやっとした。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

 

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!