株式会社 家族2

クリーニング屋

 いつでも私が服屋で、妹がクリーニング屋だった。
 私と妹が小さかったころ、女の子の全身像と服の絵を描いた紙を切り抜いて作った着せ替え人形。私たちは紙の人形に好きなだけ服を着せ替えて気分を満たすことができた。
 絵を描くのがわりと上手かった私は、いろんなパターンの服を作っては妹に選ばせてあげた。自分でも服の絵を描いてみたいと言って一度は挑戦したこともあった妹だったけれど、いざ出来上がった服の絵はピカソのような前衛的なタッチであり、子供ながらにも着る気の失せる仕上がりだった。
 服をデザインすることを諦めた妹は服屋を私に任せて、自分は潔くクリーニング屋さんになると言った。
 私は偽札を作って、お互い商売として成立させるつもりでいたが、妹はめったに私の服を買いにきてくれないくせに『姉ちゃん、服が汚れていますよ』と言ってやたらと私にクリーニング屋を利用させた。妹の経営するクリーニング屋は高額を要求するため、平等に配当していたはずの私の手元のお金はすぐに乏しくなって、最終的には破産した。
 いつでも私の前には服の在庫だけが残り、妹の前には札束が積まれていた。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!