株式会社 家族2

表札

 実家で妹は、母からいろいろと便利なものを貰っているが、父は私に表札をくれた。

「父さん新しいのん作ったからもういらんねや」

 と父は言う。茶色く焼けた古い木に〝山田ひでお〟と文字が彫り込まれている。もらっても使い道がない。

 女の独り暮らしを心配する母は、「外に釘で打って、男が住んでることにし」と提案した。母は捨てるに捨てられない表札の使い道をプレゼンテーションして私に持ち帰らせようとしている。表札など欲しくないくせに妹は「いいなあ」と言った。私が「あげよか」と言うと妹は「それは長女であるお姉さんのもんやで」と言ってうまく回避した。
 父が「表札を娘に贈れる喜び」というテーマで話し始め、長くなりそうだったので、私は持ち帰る荷物をまとめていたダンボールへ表札を入れた。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!