株式会社 家族2

ケーキ

 小さい私と妹で留守番をしていると、退屈になった妹が、私にケーキの絵を描いてくれと頼んでくる。私は思いつくかぎりのケーキの絵をおいしそうに描いた。ワンホールのケーキの絵を、色鉛筆で彩色してからハサミで丸く切り取る。いくつかのケーキコレクションの中から慎重に吟味して、ひとつを選んだ妹は、それを口元に運んで想像で食べる。目を閉じて咀嚼する妹は、本物のケーキの味がするでと言った。半信半疑で食べてみた私もそう思った。
 その後、妹がよりときめくようにとアイデアを凝らした私はワンホールのケーキの絵に切り込みを入れて、1ピースで食べられるように工夫した。それからケーキをのせるための皿やフォーク、ティーカップも描いてハサミで切り取った。付属品が充実したことで、リアルになった紙のケーキに妹は満足そうだった。
 やがて母が帰宅し、紙のケーキを食べている妹を見て「あわれやん」と言う。そういえば妹が考案した“戦争ごっこ”に私はよく付き合わされた。押し入れの中で横たわった妹が静かに息を引き取るのをただ私が見守るという憂鬱な遊びだった。紙のケーキか戦争ごっこ。私は断然ケーキ遊びが好きだった。想像のティータイムが終わると、紙のケーキは色鉛筆の平たい缶にきれいにしまう。
 おやつに母が作る干し葡萄入りの蒸しパンは、蒸し上がりを急いで食べないとカチカチに固まったので妹は必死だった。私ベーキングパウダー入れんの忘れてたんやわと母は最近になって気付いたようだ。その点で、好きなときに色鉛筆の缶から出してゆっくり食べられる紙のケーキが妹は好きだった。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!