株式会社 家族2

電話

 家族の誰かに電話をする。友人たちは、むやみに実家に電話すると家族に驚かれるか、心配されるか、生活に困っているんじゃないかと勘繰られるからめんどうだと言うが、それは滅多に電話しないのが原因だと思う。
 電話をしたのはコロッケの衣をカリカリにするコツを聞いただけだ。そんなことはインターネットで調べればすぐにわかる。でもパソコンを開く手間と接続にかかる時間を考えると、私はつい電話を手にしてしまう。それに電話をすれば、今夜私がコロッケに挑戦することを母に知ってもらえるし、そんな手間のかかることをしようとしてるくらいに今の私に心の余裕があることも伝わる。
 脳内でループする昔の歌にいらいらして、歌手の名前を教えて欲しいと父に電話をする。「それはあれやぞ、歌ったろか」と言ってどんな状況下なのか、父は歌を歌っている。けれど父にもそれが誰の歌かわからず、今度は父が母に電話をする。母も誰かを思い出せず、全員がいらいらしたところでインターネット、今日びインターネットやで。
 
 誰の歌か知らないし、知ろうと思わないが、父に歌わせたくて電話をする。歌う父の傍らで「父さん、そこ音程こうよ」と言って母が歌う。たぶん労働歌だ。それをうらやましがった妹は、「私も歌ってもらお」と父に電話をして、NTTは私たちから通話料を儲けている。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!