株式会社 家族2

靴べら

 

 家の靴べらが行方不明になると、帰り道に落ちていたと言って、バイト帰りの妹が持って帰ってくる。

 母のプロファイリングによれば、我が家の誰かがかかとに靴べらを差し込んだまま出掛けるということらしいが、父は私を犯人だと思っている。

「おまえはその辺だらしないからな」と父は言うが、私は父が犯人だと思うし、本当は母も、真犯人が父であると目星はつけていると思う。

 靴べらをかかとに差し込んだまま外の世界への一歩を踏み出す父を、私はだらしないとは思わない。未来を見つめている証拠だと思っている。父の意識は常に目的に向かって前進することにのみ向けられている。靴が履けた瞬間、ドアを開けて歩き出すことにだけ集中するのは当然のことだろう。

山田かおり

題字:山田まき 絵:山田ひでお

 

プロフィール



山田かおり

1974年、兵庫県尼崎市生まれ。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学ファッション科)卒業後、ファッションブランドQFDを立ち上げる。CM、舞台、ファッション誌に衣装提供。2010年、QFDウェブサイト内のブログをまとめたエッセイ『株式会社 家族』(弊社刊)を出版。

ひとこと・ふたこと

9月3日(土)、4日(日)の二日間、山田かおりさんの手掛けるファッションブランドQFDの、久しぶりの展示会が開かれます。どなたでも入場できます。詳しくはHP[ http://bit.ly/q2fBKU ]をご覧ください。初の小説「猫穴」が季刊「真夜中 No.14」に絶賛掲載中!