第2回:ウルトラミラクルラブスートリーと僕

2009年08月12日

 横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』が公開中ですが、僕は麻生久美子さん演じる町子が働く幼稚園に通う男の子、小太郎のお父さんの役で出演させてもらっています。
 この映画を観て、男性と女性はまったく違う生き物だと改めて思い知らされました。“ラブストーリー”とタイトルにはありますが、恋する男女の心模様というよりも、男性と女性の方向性の違いを見せつけられました。真面目な話、性器にも見られるように、男というのはまっしぐらにつき進み、女というのは受け入れつつも決して形を変えることなく調和を保ち、超然としています。性器はいつも見ているのに、この映画の主人公たちを観るまで、全然考えたことがありませんでした。まさに“世紀”のラブストーリーです。
 この映画を観て、僕は昔好きだった人のことを思い出しました。高校の時からずっと好きで、片思いのまま告白もできなかったのですが、何年か前にその彼女は僕の友達と結婚して、子供もいます。でも2、3年前、帰郷のため大阪へ向かう新幹線に乗っている時にたまたま彼女からメールがあり、彼女達の家にご飯を食べに行くことになり、その日おばあちゃんに会う約束をしていたのに「帰るの明日になるわ」とウソをついて、旦那と子供がいる彼女の元へ下心全開で向かいました。
 新大阪から千里中央に行き、そこからモノレールに乗って彼女と子供が待つ南茨木に着くと、二人は改札に立っていました。自然と子供を挟んで三人で手をつなぎ、すき焼きの材料を買いにスーパーに立ち寄ってから彼女達が住む団地に向かいました。
 彼女が台所で準備をしている間、僕は子供と遊んでいました。そうしているうちに、友達である彼女の旦那から僕の携帯に「今日は帰らへんから泊まっていけや」と電話があり、彼女にも伝えといてと言われました。言われた通り伝えると、どうやら彼女も旦那の友人である僕が泊まることには抵抗がないらしく、すき焼きを食べている時に着替えを持ってきました。三人で寝ると思うと、段々自分が旦那なんじゃないかと思えてきて、夫婦なんだからヤッてもいいんじゃないか、むしろヤラないといけないんじゃないか、などと最低な考えが頭の中をグルグル回りはじめたとき、彼女が子供と「いーとーまきまき、いーとーまきまき」と歌い出しました。
 それを見て、先程までこの部屋には、嫁と子供と旦那がいたはずなのに、今は母と子と知らないオッサンがいることに気づきました。
 感動的なほど超然とした彼女の母性により、僕のウルトラミラクルは現実へと還されました。アカン、もうここにいたらアカンと思い、「約束を忘れてた」とウソをつき、「子供に何か買ってあげて」とかっこつけて2万円を渡して部屋を出ました。
 駅に向かって歩いている途中、残り3千円しか持っていないことに気付き、子供の頃オカンに「かっこつけさん、はじかくさん」と言われたことを思い出しました。
 モノレールに乗り、一駅過ぎた地点でふと窓の方に目をやると、久しぶりに太陽の塔を見ました。いつ見ても、ようこんな変なもん作ったなと感心させられ、自分の考えていることなんてちっぽけだと思わされます。
 横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』は、太陽の塔を見たときのような感動を僕に与えてくれました。僕も映画の主人公・陽人のように、どんなかたちであれ、超然とした存在を守れるような男になりたいです。

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プロフィール



宇野祥平

1978年、大阪府生まれ。主演した短篇映画『女』『鵜野』(両作とも監督・前田弘二/05)がひろしま映像展2005でグランプリと演技賞を受賞し注目を浴びた。以降『オカルト』(監督・白石晃士/09)『超・悪人』(監督・白石晃士/11)等の映画に主演。その他の映画出演作に『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(監督・松岡錠司/06)『フレフレ少女』(監督・渡辺謙作/08)『くりぃむレモン 旅のおわり』(監督・前田弘二/08)『ウルトラミラクルラブストーリー』(監督・横浜聡子/09)『ゲゲゲの女房』(監督・鈴木卓爾/10)『NINIFUNI』(監督・真利子哲也/11)『劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ』(監督・入江悠/11)『婚前特急』(監督・前田弘二/11)『ハラがコレなんで』 (監督・石井裕也/11)『キツツキと雨』(監督・沖田修一/12)『苦役列車』(監督・山下敦弘/11)『黄金を抱いて翔べ』(監督・井筒和幸/12)『横道世之介』(監督・沖田修一/13)など多数。『舟を編む』 (監督・石井裕也)、『ぼっちゃん』(監督・大森立嗣)が現在公開中。テレビドラマには『深夜食堂』(09、11/TBS)に準レギュラーとして、『D×TOWN~太陽は待ってくれない~』(12/TX)では準主役として出演。BeeTVにて配信中のドラマ『午前3時の無法地帯』にもレギュラー出演している。舞台においても『真夜中vol.3鳥ト踊る』(作・演出:ノゾエ征爾/11)、あうるすぽっとプロデュース『季節のない街』(作・演出:戌井昭人/12)などに出演。

ひとこと・ふたこと

宇野さんが紹介した映画『自由が丘で』は2014年12月13日(土)シネマート新宿ほかにて全国順次公開です。