最新号の読みどころ

No.14 2011 Early Autumun

特集 ノンフィクション
   生き生きと世界を見る
ペンを、カメラを、レコーダーを携えて。あるいは手ぶらで。あの人は出かけていった。過去でも未来でもない、わたしと同じ2011年を生きる人から届いたノンフィクション。


写真・文

撮影地点:8848m 
-エベレスト、真夜中の頂上アタック-
石川直樹 

エッセイ

クートラスの思い出
岸 真理子・モリア

ブックガイド

”インタビュー”によるノンフィクション名作選 
感情の遺跡――空に放たれた声を集めて
木村俊介

マンガ

Tさん(東京在住)は、この夏、盆踊りが、おどりたい。
高野文子

紀行文

小笠原記
前田司郎

会見記

未来の映画のために――監督会見記
ラッパー・B.I.G.JOE――とりかえしのつかなさ
三宅 唱
活動弁士・澤登 翠――完成台本は存在しない
井上都紀

エッセイ

ドキュメンタリーと
フィクションとノンフィクション
想田和弘

論考

ノー、コメント
藤野眞功

日記

でももうここにあるのは前の世界ではない
――日記3.11-6.23
大友良英

写真

すべては初めて起こる
大森克己

論考

報道写真について
ホンマタカシ

写真

東北
田附 勝


 
小説

テニス
いしいしんじ

写真+短歌

NASA57577
写真・瀧本幹也 短歌・穂村 弘

読み切り小説

カフェインと人生
津村記久子

読み切り小説

P坊くんといっしょ
~池袋伝説!! 首なしライダー編~
青木淳悟

読み切り小説

猫穴
山田かおり

シネマレビュー

きっと誰の映画にもなる
鈴木 杏 深田晃司 しまおまほ

絵+文

夏の美人八景
Q&A・川上未映子
絵・渡邉良重 佐藤紀子 會本久美子




頂上まであと30m。 © Naoki Ishikawa

撮影地点:8848m
-エベレスト、真夜中の頂上アタック-
石川直樹

「2011年5月20日午前6時12分、10年ぶりにエベレストに登頂しました。頂上は快晴無風」。先日、10年ぶり2度目となるエベレスト登頂に成功した写真家・石川直樹さん。頂へと歩を進める真夜中の最終アタックのルポタージュがついに届きました。世界のてっぺんまで、あと少し。フィルムカメラでエベレストを撮影することは、今回の遠征の大きな目的の一つだったと語る石川さん。渾身の写真の数々を、ぜひ誌面で確認してください。そして本稿を執筆中の石川さんの一言。「エベレストに二回登るくらい、そのことを文字にするのは難しい」

|写真・文|

クートラスの思い出
岸 真理子・モリア

ロベール・クートラスは1930年、パリに生まれた画家です。独自の創作活動を85年に亡くなるまで続けました。中でもカルトと呼ばれるカード状の絵が特徴的で彼の代名詞ともなっています。昨年冬、日本で、初作品集が刊行され、個展も開催され、熱狂的な盛り上がりが起こりました。存命中も熱心なファンはいたものの、華やかな評価のなかった彼の作品が、没後25年たち新たなファンと出会ったのです。この詳伝の著者・岸さんは、彼と最晩年、同居し、遺言に従い作品の管理をしています。全篇は弊社より晩夏刊行予定ですが、その冒頭、アーティスト・クートラスの誕生までを、未発表のデッサン等とともに抄録しました。

|エッセイ|

『カポーティ』ジェラルド・クラーク/中野圭二訳/文藝春秋
『風の帰る場所――ナウシカから千尋までの軌跡』宮崎 駿/ロッキング・オン
『成り上がり』矢沢永吉/角川文庫

”インタビュー”による
ノンフィクション名作選
感情の遺跡――空に放たれた声を集めて
木村俊介

新刊『仕事の話 日本のスペシャリスト32人が語る「やり直し、繰り返し」』(文藝春秋)など、自身もインタビュアーとして活躍する木村俊介さんが、インタビューを軸としたノンフィクション作品の中から、選びに選んだとっておきの29冊を紹介してくれました。文字としてページに刻まれた声は、その持ち主だけでなく、時代背景をも映す「感情の遺跡」に成り得る。例えば……インタビューを生業とする木村さんならではの視点が光るブックガイドです。

|ブックガイド|

© Fumiko Takano

Tさん(東京在住)は、
この夏、盆踊りが、おどりたい。
高野文子

今回のノンフィクション特集のご相談をしたら、高野さんからいただいた答えは「盆踊り」。ネット動画を見ていたTさんは、部屋の中で新津松阪を踊り始めます――「待って、待って! そうか、盆踊りって、前へ進んじゃうんでしたね」。Tさんの動きを追うカメラ、まさに漫画を読む喜びがぎゅっと詰まった4ページ。盆踊り教室に通われたという高野さん、身体の動きの描き方にまた新たな発見があったそうです。

|マンガ|

地図:前田司郎

小笠原記
前田司郎

「日本はなくなっちゃったかも知れない。」2011年3月11日14時46分、前田司郎さんは小笠原諸島の父島から東京へと戻る船の上にいました。サンドイッチとパンを持ってビーチを目指して歩く、亀の荒い息遣いにちょっとひく、イルカに挟まれて海を泳ぐ、旅は道連れを生まれて初めて経験する――キラキラと輝く島での思い出で胸がいっぱいの帰り道、あの震災が起きた。「過去はまだあるのだ。だから書く。」前田さんの決意とともにはじまる、素晴らしき小笠原紀行文。

|紀行文|

三宅 唱『やくたたず』


井上都紀『不惑のアダージョ』

未来の映画のために――監督会見記
三宅 唱 ラッパー・B.I.G.JOE
――とりかえしのつかなさ
井上都紀 活動弁士・澤登 翠
――完成台本は存在しない

三宅唱監督の『やくたたず』、井上都紀監督の『大地を叩く女』。心を鷲掴みされたこの二作の監督が、この先どんな映画を撮るのか知りたくて尋ねてみた。「いつか必ず撮りたい映画、そのためにいま会っておきたい人は誰ですか?」――三宅監督からはラッパー・B.I.G.JOE氏、井上監督からは活動弁士・澤登翠氏の名が挙がる。まだ見ぬ映画へと続く、道の途中の、ある記録。二人の映画監督による会見記。

|会見記|

© 2010 Laboratory X, Inc.
想田和弘監督最新作・観察映画番外編『Peace』
シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中

ドキュメンタリーと
フィクションとノンフィクション
想田和弘

新作『Peace』が公開中の映画作家・想田和弘監督は、自身の監督作品を「観察映画」と呼び、台本や事前のリサーチを拝し、ナレーションや音楽などを使わないドキュメンタリーのスタイルを実践しています。刊行されたばかりの著書『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』でもその方法論をくわしく具体的に考察していますが、その一冊の、まさにエッセンスとも言える文章をあらたに書き下ろしてくださいました。はたして「ドキュメンタリーとフィクションに違いはない」のか? ドキュメンタリー映画作家による、映像における、ノンフィクション論です。

|エッセイ|

ノー、コメント
藤野眞功

ノンフィクション『バタス 刑務所の掟』、小説『犠牲にあらず』などで知られる作家・藤野眞功さんが、今回の特集に合わせて書き下ろしてくれたのは「ノーコメント」という言葉について。取材中、週に一度は聞かされる、何にも答えていないようで、時に雄弁な不思議なこの言葉。尿意との格闘、駆けながら入れるレコーダーの録音スイッチ――取材現場の臨場感や熱を伝えつつ、ぐっと対象に迫っていく俊英・藤野さんのルポタージュ。

|論考|

大友良英(5月8日郡山でのDOMMUNE FUKUSHIMA! にて)
photo by Wataru Umehara (contrapost)

でももうここにあるのは前の世界ではない
――日記3.11-6.23
大友良英

小学校3年から大学入学までの10年間を福島市渡利地区で過ごしたミュージシャン・大友良英さんは、詩人の和合亮一氏、ミュージシャンの遠藤ミチロウ氏とともに「プロジェクトFUKUSHIMA!」をたちあげ、8月15日に福島でフェスをやろう、と準備しています。悩み迷いつつ歩みつづける日々。同時的に発してきたtwitter(@otomojamjam)、ブログ(JAMJAM日記)からの抜粋と、6月末にこの3ヶ月あまりを思い起こしつづった書き下ろしの日記とを並べて掲載。ここに生きるひとりの人として、地震のあとのこの世界を見つめる切実な言葉が、ひとつひとつ刻まれます。

|日記|

© Katsumi Omori

すべては初めて起こる
大森克己

2011年桜の季節、東京都港区、渋谷区、千葉県浦安市、そして福島県飯舘村、南相馬市、福島市……大森克己さんは不思議な光が写りこむ写真を撮りつづけました。以下に、大森さんがかつて書き記した「ドキュメンタリー写真の心得」を引用します。――まずカメラを持つ前に、何故、何のために写真を撮るかよく考えましょう。写真を撮ることには、大きな覚悟が必要です。…各自黙想すること…よろしいですか?では始めましょう。まず、正面に立つ。よく見る。もっと近くによる。細部に注意をはらう。そして引いて見てみる。もっと引いて見てみる。タテ位置は断定。ヨコ位置は客観。音や匂いにまどわされない。センスだの感覚だの生意気なことを言うな。とにかくたくさん撮れ。そして、自分の撮った写真をよく観察しろ。被写体の気持ちを考えろ。そして裏切ることを忘れるな。絶交を覚悟せよ。独りになれ。現在の自分というものを簡単に信じるな。しょせんあなたの理解はあなたを越えられない。世界はあなたの友達ではない。直感は大切だ。ことばで説明できることは写真に撮るな。未来の記憶を思いだせ。そして世の中には写真に写らないものがたくさんある。

|写真|

報道写真について
ホンマタカシ

3月11日に東日本大震災が発生し、テレビやインターネット上に、報道映像が大量に流れた。ロバート・キャパの時代には、報道の主役だったはずの写真は、いまや映像にその座を奪われてしまったのかもしれない。でも、そうとも言いきれないようだ。グラフ誌が次々に復刊され、津波で汚れてしまった無数の写真を洗浄するプロジェクトが様々に展開され、写真家たちは続々と被災地に入っていく……。この時代に、写真が担う役割とはなんだろう? 写真論『たのしい写真―よい子のための写真教室』(09)で「写真=真を写す」という固定観念を揺るがせ、写真展「ニュー・ドキュメンタリー」で、写真の可能性を現代アートにまで拡張してみせた著者が考える。

|論考|

© Masaru Tatsuki

東北
田附 勝

06年から5年かけて、青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の人々の生活や習慣、儀式、文化を撮影し、7月に写真集『東北』(小社刊)を上梓した田附氏。その写真集と、未収録作品から6点を掲載しました。田附氏にとって「東北」とは、単に、日本の東北部を指す言葉ではないのでしょう。写真からは血なまぐささすら漂い、生と死のイメージを喚起します。田附氏が目の当たりにした「東北」とはなんだったのでしょう? 写真一点一点には、田附氏による撮影エピソードを添付しました。

|写真|


テニス
いしいしんじ

最近では、震災にあたり無償で読んでもらえる文芸作品をあつめたメール&WEBマガジン「Words&Bonds」の編集も担当している、小説家いしいしんじさんによる待望の新作短篇。一九二〇年に生まれ、三歳の時渡英し、「うけては、かえす、うけては、かえす」テニスを愛し続けた、祖父のお話。伝説のテニスプレイヤー、フレッド・ペリーまでもが、ウィンブルドンの大会で、少年の頃の「おじいちゃん」を「ボールボーイに」とご指名だったとか!? フィクションとノンフィクションが交錯する珠玉の一篇に、心は躍り、のちに涙がじんわり。ご堪能ください。
イギリスの老舗ファッションブランドFRED PERRYのSHORT STORYシリーズ第4弾です。
 
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|小説|

© Mikiya Takimoto

NASA57577
写真・瀧本幹也 短歌・穂村 弘

写真家・瀧本幹也氏は、09年から4度にわたって、ケネディ宇宙センターを撮影してきました(~8/14まで展覧会開催中)。スペースシャトルの打ち上げ、機体表面、アポロ計画で使われたロケットの噴射口、人類で初めて月面に着陸したアームストロング船長の宇宙服……。異様な存在感が美しく、地球が数多ある星のひとつにすぎないことに気づかされます。さらに、そんな写真群に、歌人・穂村弘氏が短歌を詠みました。NASAとうっすらとした関係を持ちながら、どこかでいまも続いているかもしれない不思議な世界が、写真から広がっていきます。リビングルームから大宇宙へ、31字のトラベリング。

|写真+短歌 |

カフェインと人生
津村記久子

津村記久子さん、待望の読み切り短篇。コーヒーメーカーを前にして「私」はふと思う。これまでの人生、コーヒーをずっと気にしていた気がする。それも、コーヒーの香りとか風味じゃなくて、カフェインのことを。たぶん、私は妻のことよりカフェインのことが気になる、はずだった。人生の、どんな瞬間でも、かけがえのない一瞬になりえる。この夏何度でも読みたい傑作短篇です。

|読み切り小説|

P坊くんといっしょ
~池袋伝説!! 首なしライダー編~
青木淳悟

「――僕は僕の新しい現実が始まる予感に震えていた」。高校入学を機に初めて東京に出てきたという一人の少年は、東武線を池袋で降りる。彼とは幼なじみながら、小学生時分に都内へ移り住み垢抜けた印象の、いま一人の少年。二人の出会いからあのアニメの第一話の物語は始まる。そして、池袋の新都市伝説、黒尽くめの女ライダー現る!! ちょうどそのとき、女子中学生三人は、テレビアニメの「聖地巡礼」をしていた。拳銃一丁ベルトに下げて署長室を出てきたP坊くんといっしょに……。最新長篇『私のいない高校』が発売されるや、あちらこちらで一気に話題が駆け巡った青木淳悟さんの、読み切り短篇小説です。

|読み切り小説|

猫穴
山田かおり

東京のエアポケットのような路地裏、おんぼろアパートを修繕しながら、もう少し広い部屋を探している私はある日、狸に似た一匹の野良猫に導かれて路地の奥へと入ってゆく。「あんたにも狸に見えるかい」しゃがれ声の主は、片手に煙草を持ってしゃがんだ辛子色のエプロンのおばちゃん。新宿コマ劇場前ゴミ捨て場で虫の息だった「狸」をはじめ、おばちゃんは野良猫たちの世話をし続けている。私は二匹の猫と一緒に動物禁止の部屋でひっそり暮らし、野良猫の観察も欠かさない。「世間」とは一歩離れた場所で結ばれた人間関係の、やさしさとおかしさと強さ――。『株式会社 家族』の山田かおり、待望の小説デビュー作は、期待どおりのぶっ飛んだキャラクターが魅力です!

|読み切り小説|

『家族X』 © PFFパートナーズ


『症例X』

きっと誰の映画にもなる
鈴木 杏 深田晃司 しまおまほ

今秋公開になる2本の映画、『家族X』と『症例X』の2本についてのレビュー。『症例X』でぴあフィルムフェスティバル2008・審査員特別賞を受賞し、同フェスティバルのトータルプロドュースによって制作された『家族X』。『症例X』は、総合失調症を患い一日をほぼ床で過ごす母親と介護する息子を、そして『家族X』は、会話はおろか、食事も共にしていない、完全にすれ違っている3人家族を描きます。震災、原発、不況…こんな非常事態に、誰もが一番に考えるのは、今の、そして未来の自分の家族についてではないでしょうか。31歳の新鋭・吉田光希監督が投げかけた家族についての問いに、3つのレビューが届きました。
 
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渋谷ユーロスペースにて
『家族X』 9月24日(土)公開
『症例X』10月 8日(土)~10月21日(金)、2週間特別上映

|シネマレビュー|

© Yoshie Watanabe

夏の美人八景
Q&A・川上未映子
絵・渡邉良重 佐藤紀子 會本久美子

とうもろこし美人、夕立美人、タオルケット美人、背泳ぎ美人、ペディキュア美人、トムヤンクン美人、ラムネ美人、ナイアガラ美人…現代の美人画8枚を、渡邉良重さん、佐藤紀子さん、會本久美子さんに描きおろしていただき、編集部がそれぞれの美人へした質問に、作家の川上未映子さんが彼女たちになりきって答えてくださいました。イキイキして、ピチピチしていて、生意気で気が強いのに、優しくて、天然で…様々な女性像が絵と言葉で立体的に立ち上がります。つい笑ってしまいながら、楽しんでいただけると思います。

|ビジュアル|


好評連載

・eri 夜の天秤[9]
・阿部和重 □(しかく) 夏
・寺尾紗穂 南洋と私 [6]青柳貫孝とMr. Blanco
・戌井昭人 松竹梅[8]みんなの橋
・保坂和志 遠い触覚[14]判断は感情の上でなされる
・ECD 幸福の追求[14]降伏のススメ
・北村道子の人生指南[14]
・VIEW VIEW BOOKS [10] 
 絵:苅谷昌江 R・A・ラファティ著『翼の贈りもの』
 コラム「本の中の見たいシーン」横尾香央留 石井好子著『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』
*長嶋 有『三十六号線』は休載いたします。
 

巻頭コラム

 〈夜間飛行〉やけのはら IN THE MIDNIGHT HOUR
 〈伝わらない言葉〉島袋道浩 やめる、たちどまる
 〈眠りの国〉尾原史和 思考と至福