菊地成孔さんが7つの歌謡曲を選び、歌詞の一部分を抜き出す、ほしよりこさんが絵をつける…カラオケボックスのディスプレイをイメージしたページです。
音楽はもちろん執筆など00年代の多岐にわたる活動をまとめた全集『闘争のエチカ』が話題の菊地さんですが、菊地さんによる選曲の解説を読めば、菊地さんの音楽と言葉が混淆した場所からこぼれてきたエッセンスのような7曲だと気づきます。ヒットチャートにこんなにも美しい歌が躍り出ていた時代――なつかしい気持ちを、ほしさんの絵が彩り、より楽しいものにしてくれます。
昭和を代表する作曲家、湯山昭を知っていますか? 『おはなしゆびさん』や『あめふりくまのこ』は、聴けばきっと、「あっ!」と思われるに違いありません。童謡の他、「シュークリーム」や「バームクーヘン」「柿の種」などなど、いろいろなお菓子をイメージしたピアノ曲集「お菓子の世界」や「日曜日のソナチネ」はピアノを習う人の定番。また、数々の合唱曲の名曲が、今も歌い継がれています。この稀有な作曲家を父にもち、甘美なメロディが生まれ出るあしもとで育ったのが、『女ひとり寿司』『女装する女』の湯山玲子さん。はじめて真正面から父と音楽について綴ります。
|エッセイ|時をこえ、演奏者が作曲家とつながる一番大きな手がかりは「楽譜」。楽譜は音楽における「言葉」のようなもの? ロンドンを基点に世界で活躍する若き作曲家・藤倉大さんとの「現代音楽」と「楽譜」をめぐるQ&A。普段見る機会のない現代音楽の楽譜の掲載も多数かないました。「歴史」と「今日」を奏でる音楽の強さ、美しさを、すこしでも誌面から感じとっていただけたら。
|インタビュー+楽譜|「とても素朴で良い香りのする藁の上をゆっくりと裸足で歩くような気持ちよさがある」アルバム、「サウンドコラージュを多用した他には類の無い不思議なサウンド。癖が強く好き嫌いがありそうだが名盤だと思う」アルバム、「ウォータードラムに凄く惹かれた」アルバムなどなど…ミュージシャン、カヒミ・カリィさん厳選の100枚が並びました。1枚1枚に添えていただいたカヒミさんのコメントは必読です。iPodやiPhoneで手軽に楽しめる音楽もいいけれど、ジャケットのアートワークも楽しみながら今一度CDショップをうろついてみたくなります。
|Disc Guide|「言葉は歌う。言葉は描く。言葉は宣明する。そして言葉は踊るのだ。言葉は生そのものである。断じて、死では、ない。」
佐々木中さんの新刊『切りとれ、あの祈る手を――〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』は思想界に清新な風を呼び起こすだけでなく、辛気くさい今この時を打破したい私たちにとっては枕元の書となるであろう…。そんな佐々木さんがこの度書き下ろしてくださったのは、「藝術」への、「音楽」への、何より「言葉」への、圧倒的なアンセム。
東京藝大の音楽学部楽理科で学ぶエッセイストの華恵さん。大学生になって初めての夏休みは、テレビのお仕事の関係もあって、ほとんどを海外で過ごしていたそう。ドイツ、アイルランド、シリア、ペルー…音をたくさん拾ってきます、と言って旅立っていった華恵さんから、まずは1カ国目のドイツ・ベルリン土産が届きました。街で拾った音を紡いで一枚のじゅうたんに。音のじゅうたんに乗って、華恵さんの旅はこれからも続きそうです。
|エッセイ|言葉や写真みたいに、音の記憶も、メモ帳に気軽に留めることができたら…。そんな想いから出来上がったのは、ペンで書いた線に音を録音できるペン形の録音機、その名も『REC/PLAY PEN』。ロンドン在住のサウンドアーティスト、スズキユウリ氏が “言葉”と“音”を引き合わせて生みだした、機械仕掛けの文房具。『REC/PLAY PNE』が出来上がるまでのアイディアスケッチや、録音できるインクを作るための試行錯誤を写真と言葉で記録しました。
|制作ノート|ミュージシャンが書き、発した言葉は、どうしてこんなにも、人の心を揺らすのか。passion, blue, peace…熱くて、かなしくて、おかしくて、音楽家の言葉には、すべての感情がつまっている。
思いを寄せる音楽家の「言葉」について、コラム6人6様。また、編集部選にて、ミュージシャンの名言を30セリフ、集めました(トム・ウェイツ、グレン・グールド、エディット・ピアフ、ニコ、ジョン・ケージ、ビョークetc.)。
「音楽は出現したとたんに消えていく。形にとどめることは極めて難しい。超人とて音楽に手で触れることはできない。音楽の臭気を吸うこともできない。音そのものに匂いはない。音には具体的な画像がない。」だから音楽を聴く。貴賤も優劣もない音そのものを聴く。あるいは、音楽の様子それを言葉にする。それは空気を写し出すことと似ているが違う…。音楽評論を旺盛に執筆するいっぽう、フォーク・ロック・バンド「湯浅湾」のリーダーとして作詞・作曲・歌唱・ギターを担当する湯浅学さんが、自身をふりかえりつつたどる、「音楽」への果てのない道中の記録。
|エッセイ|真夜中NO.3、NO.9でも参加していただいた画家・イラストレーターのqpさん。WEB上の簡易ペイントソフトを使って、音楽をテーマに絵を描いてくれました。カラフルな音の粒子が集まったような、緻密でポップな、バイオリン、ドラム、管弦楽器、ピアノ、歌…
8ページにわたって誌面からさまざまな音楽が聞こえてくるようです。
「クロード・シャブロルの映画的な風土にどんより漂っているのは、シニカルというほかはない徹底した平等思想である。それは、階級、性別、年齢にかかわりなく、ふとしたきっかけで、誰もが殺人を犯す権利を行使してかまわないという民主的な社会観だといってもよい。(本文より)」
9月12日に亡くなった映画監督クロード・シャブロル。「ヌーヴェルヴァーグの旗手」と呼ばれ『いとこ同志』が代表作と言われ続けたシャブロルは、50本以上もの長編作品を残しているが、その半分以上が日本では公開されていない。その意味で、シャブロルは死んでいないのだ。いまあらたに、この真に優雅な映画作家に出会うために、「社会の無数の傷跡を摘出してみせた鋭利な筆遣いを反芻する」ことからはじめたい。
「とはいえ、自分は紛れもなくつかファンである。これは間違いない。」
『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』など数々の名作をのこし今年7月に亡くなられた、つかこうへいさん。つかさんの著書をこれまで繰り返し読んできたという松尾スズキさんに、つかさんへ寄せる思いを綴っていただきました。稀代の戯曲家、演出家であり小説家であるお二人のご出身は福岡県。同郷でもありますが、松尾さんがつかさんについて言及されるのは初めてのこと。タイトルは「ひかれものの血」。それはどんな「血」でしょうか。
最新写真集『SWISS』が話題を呼び、また最近では『背中の記憶』など文芸作品での評価も高まる長島有里枝さんが、イギリスの老舗ファッションブランドFRED PERRYのために、短篇小説を書き下ろしてくださいました。
70〜80年代のUKロックバンドや楽曲タイトルがちりばめられながら、いまどきの「パンク」精神を心に宿す、現代の子どもたちの機微が描かれています。
11月中旬には、FRED PERRYのiPhone/iPadアプリでも全文を読むことができますので、このチャンスにぜひご一読を。
皆既日食に合わせ、南太平洋の島々を訪ねた写真家・石川直樹さん。真夜中のトンガの空港で出会ったのは中国人夫婦。サモアで訪ねたのは『宝島』で知られるイギリスの大作家・スティーブンソンの旧宅と墓。
楽園と呼ばれる一方で、「アジアからもヨーロッパからもアフリカからも、そしてアメリカ大陸からも遠い、彼方そのもの」でもある南の島。「幸福な人間は故郷を捨てないとしたら、彼らが大陸から隔絶されたポリネシアへと居を移したのはなぜか」と石川さんは考える。彼方へと向かう人々は、小さな秘密を胸に抱えているのでは…?
撮り下ろし写真とともに届いた最新紀行文。
夫婦、兄妹、カップル…ふたり組みが印象的な映画が、今秋、ほぼ同じ時期に公開されます。4本の作品を、4人の方にご覧いただき、それぞれレビューをお願いしました。
西加奈子×『ゲゲゲの女房』(鈴木卓爾監督)
吉野寿 ×『海炭市叙景』(熊切和喜監督)
茂市玲子×『ハーブ&ドロシー』(佐々木芽生監督)
山本直樹×『スプリング・フィーバー』(ロウ・イエ監督)