散歩道で出合ったさまざまな人、もの、現象に「私」が感じた「なぜ?」について、芸人、詩人、科学者、のお三方に、それぞれの視点からお答えいただく科学Q&A。
ある冬の日、私は暖房のきいた部屋でずっと読書をしていた。本を読むのにもいい加減飽きた私は、散歩に出かけることにした。玄関に飾ってあるバラ。冬に咲くバラと五月のバラではどこが違うのか? 家を出て、夕暮れ時の道をゆく。道端に残った雪。白くてまぶしい。雪はどうしてこんなに白いのだろう? やがて日は落ち、遠くにネオンサインが灯る。ネオンにいろんな色があるのはどういう仕組みなのか?――科学は決して難しくて手の届かないものではなく、私の生活のすぐそばにあるもの。いつもの散歩道が一味違って見えてくる10ページ。
手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した単行本『黄色い本』をはじめ、長年多くの読者を魅了しつづける漫画家・高野文子さんによる久々の描き下ろし! 創刊号で高野さんにご自身の漫画論を書いて頂いてから早3年。時折お会いしては、最近読んで面白かった本の感想などをお聞きしていました。その中で度々話題になったのが、一般向けの科学書の面白さ。自分を取り巻く身近なところから宇宙の果てまで、この世界に潜む不思議を、平明だけれども美しい文章で綴ってきた科学者たち。その魅力を紹介できたら、そんな思いから今回の企画が生まれました。今回、数ある候補の中から高野さんが選んだのは、ビッグバン理論の父、ジョージ・ガモフの『不思議の国のトムキンス』。20世紀の偉大な物理学者が書いた、ユーモア溢れるこの物語は、数十年が経った今も多くの人に読み継がれています。今作はその中の一篇「脈動する宇宙」にインスパイアされて描かれました。雨降る冬の日、お母さんと赤ちゃんが体験した不思議な不思議な出来事――必読です。
|ふしぎマンガ|高野さんの漫画のもとになった『不思議の国のトムキンス』。ではこの物語に描かれていることとは、科学的にはどういうことなのでしょうか? そしてガモフとは一体どんな人物だったのか? 『ものの大きさ』『人生一般ニ相対論』など、一般向けの科学書やエッセイも好評の宇宙物理学者・須藤靖さんにお聞きしました。現役の科学者が読みとくガモフの「脈動する宇宙」。
|エッセイ|昨年、2004年から描きためたシリーズの全貌を発表した展覧会『妖精たちの行く道・I SAW A LOT OF FARIES2004-2010』でその作品の世界観を印象付けた画家・KYOTARO(青木京太郎)さんと、21歳で発表した詩集『グッドモーニング』で第13回中原中也賞を受賞した詩人・最果タヒさん、そしてAR(現実拡張)技術を用いたパフォーマンスでテレビCMや新聞広告などでも話題を呼んでいるAR三兄弟さんによる異色のコラボレーション企画。
幻想的な星座絵と、夜の闇にすいこまれるような詩、誌面を飛び出してさらに星空を輝かせてくれるARで、真夜中でしか実現しない、特別なプラネタリウムが出来上がりました! 1年のどの季節よりも華麗な冬の星空を、真夜中に詰め込んだようなページです。
AR天体観測はこちらからお楽しみください! →http://mayonaka.ar3.jp|詩+Visual+AR|
※真夜中No.12の誌面にあるARマーカーが必要です
創刊号より連載されていた、いしいしんじさんの長篇小説「雪」第一部がいよいよ最終回を迎えます。第二次世界大戦を主な背景として、東京、秋田、大阪、サイゴン、満州、パリ、ケーニヒスベルク…を舞台に繰り広げられる、人間の暴力や礼儀、そして自由について考えぬかれた大作です。
第一部のピリオドに寄せられたのは、写真集『二月』で北海道の冬の光景をとらえた小畑雄嗣さんの雪の結晶の作品。恵比寿の東京都写真美術館で2/6まで作品を展示している小畑さんには、中谷宇吉郎博士の十勝の実験室・白銀荘を撮った写真もありますが、「雪」の重要な登場人物には、主人公の慎二、祖父、ダニエルのほか、ドイツ人建築家ブルーノ・タウト、そして世界で初めて人工的に雪の結晶を作り出した科学者、中谷宇吉郎博士がいます。
荒れ狂う砲弾、軋む列車、降りしきる雪、凍った地面、朝の公園…いしいさんの筆の先は、転がりつづけます。
本誌の取材がきっかけで出会った遠藤秀紀さん。無制限、無目的をモットーに日本全国から動物の死体を集めて解剖、それらを人類の知へと生まれ変わらせる――この「遺体科学」という学問を提唱し、東京大学の総合研究博物館の教授もつとめる気鋭の科学者です。お会いすると、学問とはどういうものか、大学のあるべき姿はどういうものか、いつも熱く語ってくれる遠藤さん。科学者はこのように死んでいかなければならない――年末、急に死んでしまったキリンの解剖で忙しい中、遠藤さんの科学者像について書いて下さいました。
|エッセイ|わたしは数年前、数学者T…氏とチェスを三局指した。数ヶ月後、早春の深夜の路上でばったり出喰わし、彼が住む古びた煉瓦造りの洋館を訪れる…。T氏邸を辞去したときには、外はもううっすら明るみはじめていた。「八×八の迷宮」(『知の庭園』所収)、「シュタイニッツの憂鬱」(『青の奇蹟』所収)、「ボビー・フィッシャーという天才」(『散歩のあいまにこんなことを考えていた』)など、チェスについてのエッセイもある松浦寿輝さんが描く、チェスを指す数学者。隠居の数学者の、うっそりとした存在感とその語りに惹き込まれる短篇小説です。
|小説|相対性理論をはじめ、様々なフィールドで多岐に渡る音楽活動を行うヴォーカリスト・やくしまるえつこさん。「修理屋さんになりたい」と思っていた少女時代から「家電になりたい」と思うようになった現在まで、彼女が大切にしてきた小説、映画、ニュース、音楽…。それらに静かに宿る科学のきらめきの数々を、そっと教えてくれました。本誌初公開! やくしまるえつこさん自らがイラストと解説文を手がけた科学百科です。
|Text+Visual|佐渡島で真言宗の僧侶をする傍ら、写真家としての活動をつづける梶井照陰さん。圧倒的な波の迫力で大きな反響を呼んだ写真集『NAMI』につづいて、昨年『KAWA』を発表し、さらに研ぎ澄まされた世界観に周囲を瞠目させました。その梶井さんの波の新作に、翻訳家の金原瑞人さんが、ヴァージニア・ウルフ“THE WAVES”の抄訳を寄せてくださいました。イギリスの女性作家ウルフによる、夜明け前から日没までの緻密でドラマチックな波の描写と、梶井さんの写真との神秘的な共鳴をご堪能ください。
|翻訳+visual|昨年発表された長篇小説『ヘヴン』が大きな話題を呼び、映画『パンドラの匣』(2009年、冨永昌敬監督)ではキネマ旬報新人女優賞も受賞した川上未映子さんに、短篇小説を書き下ろしていただきました。アイスクリーム屋で働くわたしと、そのお店に規則正しく二日おきにアイスクリームを買いにくる彼との話は、甘くて冷たい、特別な一篇。
イギリスの老舗ファッションブランドFRED PERRYのSHORT STORYシリーズ第3弾です。
昨年秋に開かれていた3つの展覧会。連日行列ができるほどの賑わいを見せたゴッホ展、写真集も復刊されて新たなファンを生んだ鈴木清展、本誌のADでもある服部一成さんの個展。そんな3つの展覧会を、写真・イラスト・現代美術とそれぞれの分野で活躍されている梅 佳代さん、qpさん、金氏徹平さんにレポートしてもらいました。しかも、よくあるお決まりの“展評”ではなく、なんと壁新聞という形式で! 同じ3つの展覧会を、3人はどのように見たのか? 展覧会に足を運んだ人もそうでない人も、誌面をぜひチェックしてみて下さい。
|アートしんぶん|本誌の発売日と同じ1/22についに公開! 日本映画界の彗星・瀬田なつき監督の新作『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』。自主時代からその類い稀なる才能で、映画ファンからは熱い視線を浴びていた彼女のメジャーデビュー作に作家・津村記久子さんから一本のレビューが届きました。津村作品にも通じる暴力、子ども、過去の記憶。ピリッと胸に刺さるレビュー、ぜひ映画と一緒に味わってください。
|シネマレビュー|昨年11月のある一夜、新宿の書店の一角に集まった数十人の人たち。熱のこもった視線の先には、二人の男—―佐々木中さんと坂口恭平さん。各方面で話題となったお二人の著書『切りとれ、あの祈る手を』と『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』を軸に、二人が語った「次の自由」。完売御礼となったトークセッションの様子を真夜中で独占レポートします。
また、フランス思想・文学者の宇野邦一さんが、『夜戦と永遠』を中心に、佐々木さんの著作を丁寧に読み解いたエッセイも同時掲載です。
モーラは夫と死に別れ、女手ひとつで子供を育てなければならなかった。夜ごと糸車を回して糸をつむぎ、機を織りつづける。ある夜、妖精たちのささやきが、耳に届く。夜はかれら〈よきひとびと〉の領分。ぞろぞろやってきて、歌をうたいはじめる…。
アラン諸島に住む現代の作家ダラ・オーコニーラが語る、石と風の国アイルランドのお話。ケルトの昔話にも姿を見せる妖精たちの、歌の文句が賑やかで楽しい。
昨年、外国文学ファンのあいだで話題になったウィリアム・トレヴァー『アイルランド・ストーリーズ』の翻訳を手がけた栩木伸明さんによる選・訳です。イラストは唐仁原多里さん。
1950年代、単身パリに渡り、『勝手にしやがれ』『太陽がいっぱい』などヌーヴェルヴァーグの傑作の数々を買い付け、日本に紹介した秦早穂子さんによる自伝。“感動”という言葉を使わずにはいられない、最終回です。
これは戦争に翻弄された家族の物語、戦争する大人たちを見、一人で旅立つと決めた女の子の物語、そして“秦早穂子”というひとりの女性がヌーヴェルヴァーグに出会い、映画と人間の魅力、魔力を体感していく、映画史的にも貴重な記憶のタペストリーです。