『ジャーマン+雨』『ウルトラミラクルラブストーリー』などで話題を呼んだ横浜聡子監督による脚本『真夜中からとびうつれ』をきっかけに、誌面とWEB、ふたつの場所でそれぞれの世界が生まれました。
誌面には、その脚本とともに、瀧本幹也さんによる撮りおろしのフォトストーリーが掲載されています。
いっぽうWEBでは、多部未華子さん主演による13分15秒の映像作品『真夜中からとびうつれ』を無料公開中。
脚本は、撮影に向けて幾度も書き直されました。そのため、雑誌の校了後に撮影された映像作品と、掲載された脚本には違いがあります。監督が紙の上に描いた世界と、実際に撮影された映像作品を合わせてご覧いただくことで、「映画が生まれるとき」の気配を感じとっていただけたら。
|脚本+写真|
熱狂的なファン多数の映画監督鈴木清順は、じつは素晴らしい文章家でもありました。『鈴木清順・エッセイコレクション』(ちくま文庫)が昨年発売され、その魅力を再発見するチャンスが広がりました。このエッセイ集を携えて、3月3日雛祭りの日、清順さんのお宅でお話を伺いました。本のお話からはじまり、話題は、関東大震災の年(1923年)に生まれた清順さんが行った戦争のこと、通った旧制弘前高校のこと、日活でそしてその後に撮ってきた映画のこと、内田百閒や泉鏡花など映画の原作のこと、これから撮ろうと考えている映画のこと、などなどへ。今井智己さん撮影の、清順監督のポートレイトがまた、素敵です。
|Interview|昨年、初監督作『カケラ』でデビューし、注目を集める若手映画監督・安藤モモ子さんが、最新作『サヴァイヴィング ライフ―夢は第二の人生―』の公開を夏に控え来日していたチェコ映画界の巨匠ヤン・シュヴァンクマイエル氏に会いに行きました。対談前日、夢でシュヴァンクマイエル氏と一足早く対面したという安藤さん。夢の中で行われた「真夜中」の対談は、安藤さんを眠らせて、見ている夢をシュヴァンクマイエル氏が覗くという企画だったとか! 現実の対談は、夢、資金、自由、信仰、五感、未来をキーワードに、果ては宇宙にまで広がる壮大なお話になりました。
|対談|ベストセラー小説やコミックなど原作ものの映画は、これまでもたくさんあったし、たぶんこれからもどんどん撮られるはず。古今東西、さまざまな原作から作られたオススメ映画、二人で100本超、ジャンル別に教えていただきました! そのセレクトの模様の中継です。事前に映画を60本リストアップしてくださっていた樋口さんと、対談の日その場で作品名を挙げていく中原さん、二人のかけあいに、笑いながら目からうろこが……。
|対談|デヴィッド・フィンチャー監督『ソーシャルネットワーク』は、登場人物の心の声=ボイス・オーバーなしで過不足なく、120分で物語を語りきっていた――ここ数年の映画を中心に、アメリカ映画の「語り」の変遷について、具体的に映画タイトルを挙げつつ、思いをめぐらす。イーストウッドは果たして、「古典的」な作家か、「ホラ話」の作家か。スピルバーグは? タランティーノは? ウェスとポール・トーマスの二人のアンダーソンは? あるいはカサヴェテスの雨。最新作『東京公園』の公開を6月にひかえた青山真治監督、久々の、映画についての長文論考です。
|論考〈映画の「語り」〉|三浦しをんさんの小説『まほろ駅前多田便利軒』が映画化されました。――まほろ市でひとり、便利屋を営む多田啓介は、ある正月の寒い夜、バス停の前でかつての同級生行天春彦と出会う。今晩泊めてくれ、という行天の一言から、二人の共同生活がはじまって……。映画を監督した大森立嗣さん、多田を演じる瑛太さん、行天を演じる松田龍平さん、そして多田と行天を生み出した原作者三浦しをんさんが、それぞれ綴り、まほろ市を経由して届いた、6通の手紙。瑛太さん+松田龍平さんの撮りおろしツーショット写真も掲載。
|手紙|まだ肌寒い2月下旬、作家・山崎ナオコーラさんと、写真家・川島小鳥さんと一緒に群馬県高崎市へ。この日の目的は、石井裕也監督の新作『ハラがコレなんで』の撮影現場を見学すること。昔ながらの長屋が集まる一角で撮影が行われていました。妊娠9ヶ月の妊婦ヒーローを演じる女優の仲里依紗さんの大きなお腹。録音スタッフが無線で出す指示。台本を見ながら一服つける監督。「本番でーす」「回った」「本番!」たくさんのスタッフのまなざしが一点に集まる。映画が生まれゆく瞬間をとらえた現場ルポ。
|撮影現場ルポ|
© 2009 Rai Cinema – Offside – Celluloid Dreamas
マルコ・ベロッキオ監督『愛の勝利を』
レビュー:井口奈己
5/28(土)シネマート新宿、ほか全国順次ロードショー
© Three☆Points シンジケート
山本政志監督『スリー☆ポイント』
レビュー:松江哲明
5/7(土)京都シネマ、5/14(土)渋谷ユーロスペース、ほか全国順次ロードショー
© 2010 Paranoid Pictures Film Company All Rights Reserved.
バンクシー監督『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
レビュー:藤野眞功
7/16(土)渋谷シネマライズにてロードショー
© Vivo film, Essential Filmproduktion, Invisibile Film, ventura film.
ミケランジェロ・フランマルティーノ監督『四つのいのち』
レビュー:豊崎由美
4/30(土)シアターイメージフォーラムにて、ほか全国順次ロードショー
周防正行監督『ダンシング・チャップリン』
レビュー:松井 周
銀座テアトルシネマにて上映中
日本劇場公開を心から願う、
愛しの新作5作品
ミランダ・ジュライ監督『The Future』
ヴィム・ヴェンダース監督『PINA』
ミシェル・オスロ監督『Tales of the Night』
タル・ベーラ監督『The Turin Horses』
マノエル・ド・オリヴェイラ監督『The Strange Case of Angelica』
レビュー:岡本珠希
コラム:田名網敬一(アンドレイ・タルコフスキー)、KIKI(ペドロ・アルモドバル)、片桐はいり(アキ・カウリスマキ)、田中功起(アフルレッド・ヒッチコック)、大森克己(ジャン=リュック・ゴダール)、松田広子(ジョン・カサヴェテス)
絵:伊野孝行
思えば映画はすべて「人生」なのだけれど、こと「人生」を感じさせる映画のなかのセリフを30コ、黒住光さんが選びだしました。ひとことなのに、まるで1本の映画を見たかのような心うるおうエッセンスが詰まっています。短い解説がまたピリッと小気味よく、沁みます。同ページ内コラムでは、6人の書き手それぞれが、映画監督の言葉を引いています。あの映画監督は、どんな言葉を発したか。そして書き手は、その言葉をどう受けとめたか――伊野孝行さんによる6人の監督の似顔絵が、そっくり!
最初から最後まで、一人の作家の手によって作られることが多い短編アニメーション。それゆえ、登場人物のヴィジュアルはもちろん、その世界を支配する物理法則にいたるまで、ありとあらゆる細部にまでその作家の個性が宿っています。短編アニメ—ションを観るということには、その作家が解釈し打ち立てた新たな世界を知る楽しみがあるのです。昨年アニメーション作家たちと「CALF」というインディ映像レーベルを立ち上げた土居伸彰さんが、日本と世界の短編アニメーション作家たちを紹介してくれました。
|ガイド|本誌6~9号でNYの生活を描いた1Pマンガを連載してくれていた近藤聡乃さん。彼女がいま作っているのは実に5年ぶりとなる新作アニメーション「KiyaKiya」(「電車かもしれない」「てんとう虫のおとむらい」など、これまで近藤さんが作ったアニメーション作品は日本にとどまらず、海外でも高い評価を受けています)。膨大な枚数にのぼるイメージスケッチ、綿密に練られた絵コンテ、15枚連なってやっと1秒になる原画、息抜きのコーヒーとお菓子……近藤さんにしか描けない世界、それを生み出す大切なプロセス。NYのアパートから現在進行形の制作メイキングが届きました。「ああ、胸がきやきやする!」
|メイキング|多摩川のほとり、めったにお客の来ない花屋を任されている水垣鉄四のもとへ、烏谷青磁がたずねてきた。烏谷が泣いているのは、菜の花を食べたら角貝ササミが死んでしまったから……。ササミを蘇らせるため、彼らが集めようとしている物はなに?――春からはじまる危険な四つの物語。阿部和重、待望の小説連載ス タート!
|新連載 小説|板尾創路さん、冨永昌敬さん、瀬田なつきさん、黒沢清さん4人の映画監督が書いた様々な夜の会話劇と、nakabanさん、オードリー・フォンドゥガヴさん、長田哲さん、HIMAAさん4人が描いた絵がひとつになりました。そしてほしよりこさん、ウィスット・ポンニミットさんによる顔がほころぶ8コママンガも。総勢10人が描きだす真夜中のシーンには、胸に月桂樹のマークのついたポロシャツが登場します。
英国の老舗ファッションブランドFRED PERRYとのスペシャル企画。
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日曜午後の池袋、制服姿の女子生徒三人は、観劇のあと「Mドナルド」で話し込んでいた。いっぽう、消防Q太は……。かのか☆まなかのまわりにひそみ、あるいは姿をみせる一風変わった名前をもつ存在たち。まなかが目にするものとは? 2003年のデビュー以来、小説の可能性を拓きつづけてきた青木淳悟さんの最新短篇小説です。
|読み切り小説|映画『遭難フリーター』(07)で知られる、ドキュメンタリー映画監督・岩淵弘樹さんによる、3月11日から4月10日までのエッセー。地震がおきてすぐに、彼はカメラを回し始めます。阿佐ヶ谷の飲み屋での平賀さち枝さんのライブを、電気を使わずに行われたチャリティライブを、出演したミュージシャンたちへのインタビューを、実家の仙台の家族を、瓦礫だらけの街を、15000人が参加したという高円寺の反原発デモを撮影しながら彼は、「なぜカメラを回す?」と自問していました。そして、胸のうちには「誰が被災者か?」という疑問がずっと浮かんでいたといいます。
|特別寄稿[1]|大学生のころ、山谷で出会ったSさん。Sさんは元土方のおじさんで、絵を描いていて、たった二回会ったきりだったけれど、それから寺尾さんは、土方、ドヤ街、そこに生きる人びとの人生に対して無関心ではいられなくなったそうです(Sさんとの出会いから、のちに「アジアの汗」という曲が出来上がります)。一年ほど前、樋口健二著『闇に消される原発被曝者』という本を手にして、原発には、ドヤ街から流れてきた労働者が少なくなかったことを知ります。「Sさんという存在を介して、原発の問題に出会った。Sさん自身は原発労働者ではなかったけれど、それはもしかしたら山谷に暮らしたSさんが選んでいたかもしれない仕事だ。」Sさんがおしえてくれたことは、いま、ますます目の前で大きくなっていく。
|特別寄稿[2]|視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚…すべての感覚において記憶が鮮やかで、いまも少女時代をまざまざと蘇らせることのできる人だから、おいしい料理を作れるのでしょうか。でもよく憶えているのは吃音が治る小学二、三年までの時期限定だと、いまよりももっともっと自分らしい時期だったからだと、いつか高山さんはおっしゃいました。
料理家高山なおみさんによる自伝的エッセイは、季節をふた巡りして終わりを迎えます。原稿をいただき拝読し、泣かなかった回はないと思います。少女がほんとうにそこにいて訴えるからです。
そして高山さんと同じ時をまるで覗いていたかのような、合田ノブヨさんによる美しい装画もあわせてお楽しみください。