『秘伝 自然発酵種のパンづくり』 林弘子 著

 この間、『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』という本を読みました。地元で穫れた食材を使い、過度な儲けを出さずに世の中に還元していく=「腐る経済」の話はもちろん面白かったのだけど、どちらかというと僕が興味を持ったのは、著者のパン屋が自家製天然酵母でパン作りを行っていて、そのようなやり方でパンを作っているのは全国でも3、4軒しかない、というところ。
 天然酵母って富澤商店でも売っているし、そんなに珍しいものなのかなあと思ったらどうもそういうことではないみたいです。小麦と水だけでできる天然酵母があるそうで、そんなこと本当にできるのかと思ってちょっと調べてみました。

『秘伝 自然発酵種のパンづくり』は、料理研究家の林弘子さんが書いた、小麦粉と水だけで作るパン作りの本です。
 小麦と水の練りものが、自然発酵してパン種になるには、次の6つが必要になります。
 適正な菌の存在と 適正な小麦粉。それに水と適正な温度、空気と時間。
 ではいったい適正な菌ってどこにいるのか?答えはどこにでもいる、なのだそうです。有機的な生活をしている場所にはより多く存在している気がするとのことですが、なにせ目に見えないものですから、やってみないとわかりません。
 まさにきざしですね(強引?)。菌のきざしを感じながら、大さじ2杯の小麦粉と、大さじ4杯の水を混ぜあわせて1日放置。3日間同量を追加して、種から気泡が出て、酸っぱいような匂いがしてきたらまずは成功。
 その後も空気中の酵母を取り込み、パンの元種を作り、その元種を継ぎ足し継ぎ足ししながら、まるでぬか漬けのように大事に使い続けていくのが林さんのパン作りなのだそうです。

 確かに日本酒にしても味噌や納豆にしても、米や大豆が発酵することで生まれる菌を使って作るのが本来の姿で、他に何か入れると混ぜものをしたなんて言われるのに、パンだけは酵母を他から追加するというのも、よく考えたらおかしな話なのかもしれません。
 とはいえ自分にはとてもできない手間のかかるパン作りの話。パンの歴史も発酵の科学も学べて読むだけでもかなり満腹度の高い一冊でした。