『セラピスト』最相葉月 著

 どんなに親しい相手と話していても、本当に伝えたいことが相手に伝わっているかはわかりません。そもそも自分自身が伝えたいことを表現できているのかと問われると、それも自信がありません。
 人と人との間に常に存在する「理解」という壁を、超えようとした人たちがいました。
 60年代に留学先のスイスから日本に箱庭療法を持ち込んだ河合隼雄、その影響を受け、風景構成法を編み出した中井久夫ら。日本人の特質に合わせて、言葉をできるだけ用いずに心を伝達する。患者は言葉よりも自由に表現できる、その代わりに、診断する側の読解力、心をほどく力が問われます。
 ノンフィクション作家、最相葉月さんの新作は、そんな人の心へと向かいあった5年間の記録。
 人がどのように病むかではなく、なぜ回復するのかを自身を通して探求していきます。