『食卓ノオト』池田フルーツ/幸子フィッシュ 著、絵、写真、編集、装本、印刷、製本

 先週末高知に行ってきました。印象に残ったことはいくつもあるけれど、一つはオーガニックマーケットで見た、ある家族。
 毎週土曜日に開催されるオーガニックマーケットは、池公園という山のふもとの公園で、生産者が自作の野菜などを売る和やかなマーケット。その中で異彩を放っていたのが「パーラー・雨」という出店者でした。
 木箱を重ねて作った簡易な店に並ぶのは、砂糖の代わりに玄米を煮詰めて麦芽を混ぜて作る米飴を使ったお菓子やパン。子どもが書いたであろう拙い字で、「くせのあるサンドイッチ」「みんなの喜ぶ玄米チップス」って名前がいちいち刺さってきます。
 店の向こうはまるで家庭の土間のよう。地面に敷いた布の上に小さなちゃぶ台。背筋の伸びた聡明そうな夫婦と、子どもが4人。長女が小さな赤ちゃんを抱っこしてあやしています。
 そんな店の隅で売られていたのが、「食卓ノオト」でした。
 家族で年に一冊、その時々の彼らの活動や、生活における関心事が記された20ページほどの簡易な小冊子。内容は、彼らが生活を通じて考えている、理想への強い意思と実行の記録でした。

 ある号で語られるのは、貧乏の喜びについて。高知県の西南、四万十町の山間の小さな小屋のような家に引っ越した彼ら。なんと、電気、ガス、水道の設備もありません。
「ここを名づけて、今時荘(いまどきそう)」って言うんだからパンチが効いています。不便を克服する知恵も、自然を愛でる心も、人間らしい平穏な気持ちも、貧しさから芽生えるものだといいます。

 2013年発行の最新号では、第四子の出産を自宅で、家族だけで行ったことが書かれています。検診には行かず、ただただ身体や感情の変化に耳を傾けながら、自分の体に向き合い整える。穏やかに小さな命と対話をする。そんな風に毎日を過ごしたそうです。

 知らないということの強さ。という言葉が出てきます。何でも調べたり教えてもらうのではなく、知識ではなく感覚として何かを知ること。この母のなんという強さだろうと感心します。

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  • 『食卓ノオト』
  • 池田フルーツ/幸子フィッシュ 著、絵、写真、編集、装本、印刷、製本
  • パ―ラー・雨 発行所