『世界しあわせ紀行』エリック・ワイナ― 著 /関根光宏 訳

 NPR(全米公共ラジオ)の海外特派員だった筆者は、必然的に事件の起こる場所、言わば「不幸せな場所」に身を置くことが日常でした。
 ふと振り返って、
「このままでいいのだろうか。僕の人生はショートショートなのに。(アレンジしています)」
 と思ったのが彼の幸せを探す旅のはじまり。

 筆者はまず「考福学」なる学問の権威をオランダ、ロッテルダムに訪ねます。
 知りたかったのは幸福をどのようにして測定するのかということ。脳の反応を調べることもあるそうですが、一番確実なのは自己申告。
 つまり「あなたはどれくらい幸せですか?」という問いに段階評価で答えてもらうというものです。ただし、問題は客観性を欠いてしまうこと。極端な話、銀行強盗を実行する直前の犯罪者の幸福度は、毎日堅実に働く人よりも高くなることが起こり得ます。
 これこそが「幸福」ということの不確かさをよく表しています。

 ロッテルダムのコーヒーショップで、合法のハシシュ(大麻樹脂)を吸いながら、幸福と快楽の関係を考えた後は、スイスへ。
 スイスは、世界一整った町、つまり不幸になる要素が世界一少ない国ですが、一方で自殺率が高いことでも知られています。
 満たされるまで幸福を求めてしまえば、今度は、満たされた状態に退屈さを感じてしまう。人間ってやつは……。

 次に向かったのは国民総幸福量(GNH)の増加を、国家の発展を測る基準として導入しているブータン。貧困に苦しみながらも、他人への「心尽くし」が彼らの幸福を支えている現場に遭遇します。

 税金を払わなくていいくらい裕福な国、カタールや、失敗に寛容なアイスランド、そしてモルドバ、タイへと彼の幸せを求める旅は続きます。

 しかし、そもそも幸福ってなんでしょう?
 答えのない問いの周りをぐるぐる回る、僕たちの人生が凝縮したかのような旅行記でした。