『Les Chroniques Purple』Elein Fleiss 著

 考えてみれば、「Purple」というファッション誌は、定期的に衣替えをしながらずっと続いてきた雑誌です。
 1992年にフランス人、エレン・フライスとオリヴィエ・ザムが創刊した「Purple Prose」は、ZINEのような小さく薄い雑誌ながら、80年代の表層的なファッション誌のアンチテーゼとして、インディペンデント雑誌の先駆けとなりました。雑誌を作った知識も経験もないままはじめた彼女は、いち早くマーク・ボスウィックやホンマタカシといった写真家を起用し、Maison Martin Margiela、COSMIC WONDERなどのブランドをとりあげました。
 1995年には文芸誌「Purple Fiction」、ファッション誌「Purple Fashion」をスタート。それらを一緒にしたような「Purple」で、アートとファッションと文学がないまぜとなったような雑誌を作ってきました。日本でもファッションジャーナリスト、林央子との親交や、初期「Purple Fashion」のアートディレクターを務めた大類信らの功績もあって、多くの人に憧れと共に親しまれてきました。
 2004年には、オリヴィエ・ザムの「Purple Fashion」と袂を分かち、テキスト主体の「Purple Journal」を創刊。
 2009年に一号だけ発行された「Les Cahiers Purple」では、彼女が信頼する個人との協働による、パーソナルながら開かれたページを作りました。

 と、ざっと遍歴を書くだけでもすでに文字数オーバーですが、「Les Cahiers Purple」の出版以降、音沙汰のなかった彼女が、2013年に立ち上げたウェブサイトが「Les Chroniques Purple」。49人のアーティスト、作家、写真家、詩人たちに、ひと月一つの記事をアップして欲しいとお願いしました。1年間に投稿された記事は438にも及びます。

 世界のどこかで書かれる日々のこと。住む街の歴史にまつわることもあれば、数万曲がハードディスクに入るようになってしまった現在における音楽の趣味のこと、町にひとつだけあった自動車の修理工場で働いていた時に死にかけたこと、なんて人もいます。
 美しい写真や、穏やかなドローイングもありますが、やっぱり強いのはそれぞれの書く言葉。日記のようでひとりごとのようでまた呼びかけのような、うつろいゆく言葉。
 それこそが今彼女が考えるファッションなのでしょう。