『461個の弁当は、親父と息子の男の約束』渡辺俊美 著

「シングルファーザー本」というのがマストハブなジャンルとして僕の中にあって、見かけたらつい買ってしまいます。メジャーどころではやはり、エイヴリー・コーマンの『クレイマー、クレイマー』。映画では、ある日妻に出て行かれシングルファーザーになったテッドが、息子ビリーのために慣れないフレンチトーストを作るというシーンが有名ですが、妻の元に息子を返す日の朝、難なくフレンチトーストを無言で作るテッドの姿に、二人の積み重ねた長い時間を思い浮かべて、世の父親はもう一度泣くのです。

 さて、シングルファーザー本に新作が意外なところから加わってきました。『461個の弁当は、親父と息子の男の約束』は、TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さんが、二人で暮らす息子のために、息子の高校三年間、欠かさず弁当を作った記録です。弁当、しかも長く続くんだから良くないはずがありません。
 元々料理が好きだった彼は、最初は男の料理にありがちな、材料も時間もたっぷり使った凝った弁当を作りますが、すぐにこれでは続かないことに気づきます。そこで決めたルールは次の3つ。
・調理の時間は40分以内
・一食にかける値段は300円以内
・おかずは材料から作る。
 夕食の時に残ったものを夜のうちに整理しておいて、朝少しだけ早く起きて調理する。それくらい。と書いてありますが、それがどんなに大変かは想像しただけでもわかります。
 しかも相手は食べ盛りの男子高校生。好物の卵焼きと、野菜の肉巻きを基本メンバーにしながら、バリエーション豊かなおかずと、なにかしら載せたごはんが脇を固めます。
 この本が素晴らしいのは弁当の本のようで、父子の成長物語になっているところ。週末にライブがあっても日曜の夜には必ず帰ってきて、ツアー先の名産品なんかを弁当に一品加えてみる父親と、そのおかずに必ず反応してメールをくれる息子。
 思春期らしくダイエットしたいという息子のためにダイエットメニューを考えたり、クリスマスにはキャラ弁らしきものを作ってみたり。まさか弁当の写真を見て泣けるとは思いもよりませんでした。。
 泣ける弁当本という新しいジャンルを切り開いた一冊。実際にお弁当を作る父親にも役立つ本ですもちろん。