『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』トビアス・J・モスコウィッツ、L・ジョン・ワーサイム 著 /望月衛 訳

「スポーツの裏側」って書くとなにやらダークな匂いがしますが、そういう裏側ではなくて、スポーツでよく語られるジンクスや思い込みみたいなものが、本当にそうなのかを検証したのがこの本です。
「サッカーで大事な場面に限って審判が笛を吹かないのはなぜか?」ってことや、「ディフェンスを制する者はゲームを制する。は本当か?」ってことだったり、「波に乗ってるって本当にあるの? 」ってことだったり。よく言われているけれど、確かにそうってことが、彼らの専門である行動経済学を使って解き明かされます。

 例えばこのW杯、日本チームは「攻撃的サッカー」を標榜して戦い、そして……敗れました。巷にはこれからの日本チームのサッカーをどうするべきかって話題が溢れています。僕は別に詳しくありませんが、なんとなく守備重視のチーム作りに振れそうな気もします。なにせ「ディフェンスを制する者はゲームを制する。」ですから。
 でも、例えばNFLの2010年までの44シーズンで行われたプレーオフ404試合で、ディフェンスの良いチーム(シーズンの失点が少ない)と、オフェンスが良いチーム(得点が多い)が戦った時に、どちらが勝ったかを比べると、ディフェンスが勝るチームが58%の勝率、オフェンスが勝るチームが62%の勝率で、ほとんど同じだったそうです。(どちらも相手を上回るケースがあるので100%を超えています)。弱いチームならディフェンス重視の方が勝つ確率が高くなるという仮定で調査しても、それもNOでした。
 結果、「ディフェンスを制する者はゲームを制する。」がここまで広く語られる理由として、彼らが考えるのは次の二点。

・点を取ることの素晴らしさはすでにみんなが知っているから、その分ディフェンスの大切さを底上げして伝え、ディフェンスをするインセンティブを選手たちに与えるため。
・点を取ること(得ること)よりも点を取られること(失うこと)の方に強いショックを感じる、損失回避バイアスと呼ばれる人間の習性のため。

 つまり結論としては、ディフェンスもオフェンスも同じくらい大切。
 なんとも身も蓋もない話ですが、これくらい冷静に考えることも必要かもしれません。
 あ、でも、スタジアムで応援するのがスポーツの醍醐味って人には、ホームゲームでの熱烈な応援の効用も検証されていて、そこには興味深い結果が書いてあります。見る方は今まで通り頑張って応援していきましょう!