『FACE IN THE CROWD』Alex Prager 著
そこにいるのは一人ひとりの個人ですが、映画館で席に座った瞬間「この映画を見る人たち」というグループの一員となり、空港では「これからどこかに旅する人たち」というグループの一員になります。それぞれの個性とグループの属性がないまぜになる瞬間が人の集まる場所にはあります。
自分のことを思い出しても、毎日乗る電車では、仲の良い人々とも近づかないような距離で赤の他人としばらく過ごすこともあります。しかしまるでうねりの強い海の中にポツンといるように、誰も存在しないようかのようにお互いは振る舞います。ではそれぞれが勝手に動くかというと、そうでもなくある秩序の元、動いたり止まったりするのです。(難しいことを書いているようですが、満員電車で押し出されたりドア付近に留まったりしながら毎日出勤しているってことが言いたかった。)
不自然な状態が自然であるという、人が集まる場所の奇妙さや面白さを、普段は見られない微妙な高さから俯瞰した彼女の写真が伝えます。