『FACE IN THE CROWD』Alex Prager 著

 1979年、LA生まれの女性写真家、アレックス・プレガー。彼女が2013年に発表した『FACE IN THE CROWD』は、人の集まる場所、例えば空港やビーチ、パーティ会場や、交差点で信号を待つ人々などを、ななめ上から撮ったもの。アンドレアス・グルスキーが撮る写真のように、全ての人に不自然なくらいにピントが合っていて、早足で人々が行き交う場所でこんな瞬間がどうやったら撮れるんだろうかと思うけれど、実はこれ全てセットアップされたもの。最大で300人ものエキストラを使って、人々の配置やそれぞれの服装、表情に至るまで全て彼女のディレクションの元、撮影されているのだそうです。

 そこにいるのは一人ひとりの個人ですが、映画館で席に座った瞬間「この映画を見る人たち」というグループの一員となり、空港では「これからどこかに旅する人たち」というグループの一員になります。それぞれの個性とグループの属性がないまぜになる瞬間が人の集まる場所にはあります。
 自分のことを思い出しても、毎日乗る電車では、仲の良い人々とも近づかないような距離で赤の他人としばらく過ごすこともあります。しかしまるでうねりの強い海の中にポツンといるように、誰も存在しないようかのようにお互いは振る舞います。ではそれぞれが勝手に動くかというと、そうでもなくある秩序の元、動いたり止まったりするのです。(難しいことを書いているようですが、満員電車で押し出されたりドア付近に留まったりしながら毎日出勤しているってことが言いたかった。)

 不自然な状態が自然であるという、人が集まる場所の奇妙さや面白さを、普段は見られない微妙な高さから俯瞰した彼女の写真が伝えます。