『音楽からとんでみる』蓮沼執太 著

 こう暑いとビールすら濃すぎて氷入れてしまうし、音楽すら耳苦しくて聴きたくない。
 そんな時でも聴ける涼しい音といえば蓮沼執太。蓮沼フィルには春に2回ライブ行って、演者はものすごく熱いのに聴いている方はとても涼しい、奇妙な体験をしました。

『音楽からとんでみる』は彼がここ数年行ってきた音的な活動をまとめたものです。音的活動って書くのは、CD発売ともライブとも展示とも言いがたくて、彼が音をきっかけにして表現を積み重ねていく、そんな活動だからです。
 彼は自分の作る作品を、音楽と言わずに「音的」と時に表現します。「音楽」だと鑑賞者に押し付けてしまうけれど、「音」を聴いて「音楽」を聴いた人が形作る、そんな意味合いで音的は使われます。
 単に音楽を聴いてもらえれば済むところを、鑑賞者自身が音を音楽にできるように、彼はあらゆる手を使います。
 敢えてミキシングを行わず調和の取れていない音を聞いてもらうことで、鑑賞者に「音」が「音楽」になるタイミングを考えてもらったり。
 五線譜ではなく形と色の組み合わせで作られた図形譜だけで音楽を表現したり。
 友人たちに彼の曲をヘッドフォンで聞いてもらい、口ずさんでいる様子を映像にしたり。

 押し付けない代わりに、聴く側は自分で考えなくてはならない。でもそれが音楽という誰もが知っている形になるから、結果としてとても気持ちがいい。

 涼しい風のような音楽を言葉でつらつら書くと、とたんに暑苦しいのでこれくらいにしておきます。よい夏を。