『舟をつくる』関野吉晴 監修・写真/前田次郎 文・絵

 関野吉晴さんは、アフリカから南米まで、人類が通ってきたといわれるルートを、自らの力だけで逆行踏破する、「グレートジャーニー」と呼ばれる冒険を行ってきた探検家。
 ある日、彼は文化人類学の教鞭をとる武蔵野美術大学の研究室で生徒たちに呼びかけます。
「自然から直接採取した材料だけで、手作りのカヌーを作ろう。」
 それに応えた生徒たちと、かつて日本列島に人類がやってきたと考えられているルートの一つ、東南アジアから石垣島までの『海上ルート』を旅するためのカヌーを作ることになります。
 スタート地点は木を切るために森、ではなくなぜか砂浜。まずは木を切るための、刃物を作るための、鉄をつくるための、砂鉄の採取から始めるのです。
 砂鉄を鉄にするための熔解技術を学び、鋳造を学び、ついに斧ができたら、今度は縄づくり…。果てしない手順を経て、ようやくカヌーを作る木と技術があるというインドネシア・スラウェシ島に渡ります。そこで古来の舟を作る技術を使って、と思っていたものの、そこにはもう技術を継承する船大工がいなかったのです。
 老人たちに昔の話を聞いて、それを頼りに舟を作っていく作業。もう書いているだけでも大変ですが、その分最高にワクワクします。
 単純なことの無数の組み合わせがすべてを形作っている。いつかはやってみたいと誰もがきっと思う、夢のような本でした。