『ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで』高橋大輔 著

 有名なスケート選手と同姓同名の著者、高橋大輔さんの活動を、僕はいつも楽しみに追っています。高橋さんは秋田に住んでいる探検家。探検家というと、山岳派や極地派など、それぞれ得意分野があるかと思いますが、この方は〝物語派〟なんです。どういうことかというと、例えば『浦島太郎』。これは、みんなが伝説の話だと思っているけれども、高橋さんは、物語の起源となった史実がある、場所があるんじゃないか、と自分の足でその伝説を訪ね、突き止める、という探検をしています。
 今回はタイトルから想像がつく通り『ロビンソン・クルーソー』。1719年にフランスで出版された物語で、無人島に漂流した男が自給自足で助けをずっと待つ、という元祖サバイバル本みたいなお話です。幕末の頃から日本語に翻訳されていたというくらい昔の物語ですけど、高橋さんは探検家になるときにこの作品にすごく影響を受けたといいます。こういう風に自分も自由に生きたい、こんな風なことをしてみたい、と。
 それであるとき『ロビンソン・クルーソー』にモデルがいたことを知ります。お話のなかでは『ロビンソン・クルーソー』はカリブ海の小さな島という設定ですが、実は、南米のチリから600kmくらい西にあるすごく小さな島に流れ着いた海賊が、この物語の主人公のモデルになっている、という文章を読んだ。その海賊は漂流したのではなく、親分と喧嘩して島に置き去りにされ4年半ずっとそこに暮らしたという男で、高橋さんはそれを本当か、と思い、その海賊が住んでいた場所を訪ね、実際彼が住んでいた痕跡を見つけるまで探検したんです。
 300年も前の痕跡なので探すのはとても大変で、高橋さんは、この本の出版社であるアメリカのナショナルジオグラフィック社に企画のプレゼンをして、2万ドルのサポートを得て探検隊を結成しました。その島というのは今、国立公園になっているので、チリの政府に遺跡を掘る許可を何年もかけて貰って、調査したわけです。最初に行ったとき、ここが住居跡かな、という場所を見つけ、一旦はこの探検の切りをつけようと思ったんだけども、でも住居跡っていうだけで、実際誰が住んでいたのかわからないし、彼自身、これじゃ駄目だ、と思って、もう一度行きます。見つけるまで帰らないという覚悟で、当時務めていた会社を辞めて。
 それで2、3年かけて、許可を取ったり資金集めをしたりして、最後に見つけたのが、1.5cmくらいの青銅の釘の先っぽみたいなもの。そしてそれが、海図から実際の距離を計測するために使うディバイダーという道具(コンパスのようなもの)の先っぽじゃないか、ということを突き止めるわけなんです。この1.5cmの発見で、高橋さんは『ロビンソン・クルーソー』のモデルになった男の足跡を見つけたと認められ、ナショナルジオグラフィックの本誌で特集されました。二次創作とはちょっと違うかもしれないけども、この本は、ある物語をどれだけ自分ごとにできるか、ということを、とことん実践した男の話です。

この本を紹介した動画はこちら(http://bookshorts.jp/pagebypage1009/
Book Shortsとは(http://bookshorts.jp/