『馬敗れて草原あり』 寺山修司 著

 山野浩一の「競馬必敗法」を知ったのは、寺山修司の『馬敗れて草原あり』という本の中だった。「競馬必勝法」というのは巷でよく見かける文句だが、必ず負けるという「必敗法」って何だ?
 それは馬の血統を徹底して調べ、このレースはこの馬が勝つべき!という浪漫に従って馬券を買うと必ず負けるというアイロニー。なるほど、勝負事の結末は、人の作為や計算からは決して計ることができないという世の裏返しか。
 競馬狂として知られた寺山修司だが、馬の師匠がじつはこの山野浩一。実際のところ、山野は日本におけるSFニュー・ウェーブ運動を牽引した書き手としても知られているが、こちらの作家活動では寺山の方が師匠なのだとか。
 話を競馬に戻すと、当然のことながら、青森からやってきた寺山修司はアンチ血統主義で、敗者への慈愛に充ちた競馬論を展開。両者の競馬観は何だかとても噛み合わないのだが、その凸凹感を2人の男とも愉しんでいたふしがある。特に山野が書いていた『馬敗れて〜』の解説などを読むと。
 できれば、今回から始まる江口さんとの連載も、そんな風になっていったらよいなと思う午年のはじまりなのです。