『死なないやつら 極限から考える「生命とはなにか」』 長沼毅 著

 今週は「きざし」というお題なのだが、これに関する本を挙げるのがなかなか難しかった。「兆し」と書けば、小寒、大寒を通りすぎ、徐々に温かくなってゆく「目に見えない転換」のことを指すらしい。一方、「萌し」と書く場合は、立春を過ぎて梅の花が膨らむような「実際に見える変化のこと」というではないか。日本語というのは、本当に奥深いものですね。
 ところで「目に見えない」けれど、日々蠢いているものに関する本で、最近たのしく読んだのが長沼毅の『死なないやつら』という講談社のブルーバックスシリーズ。「生命とは何か?」という問題をさぐるため、彼は極限生物を紹介しながら生命という「不安定な炭素化合物」の輪郭を明らかにしてゆく。151℃の高温にさらされても、絶対零度近くの低温でも、5700シーベルト(人の致死量は5シーベルト)の放射能を浴びても死なないクマムシ。これは最近TVなどでもお馴染みだが、ほかにもネムリユスリカというハエの仲間の幼虫や微生物など、出てくる、出てくる「死なないやつら」が。
 高温部門、高圧部門、長寿部門、重力部門など、各部門のチャンピオンたちの勇姿もすごいが、なぜこのような進化を遂げたのか?をたどっていくと、40億年も続いた生命という現象の本質が、あなたの目の前に現れる。かもね。