『戦士の休息』落合博満 著

 安西さんが中日ドラゴンズの熱狂的なファンだという話は、もう片方のエッセイで書いた。ゆえにドラゴンズ関連の本を探したのだが、なぜか僕のレーダーに引っ掛かってしまったのが、落合博満元中日ドラゴンズ監督が書いた映画批評の本だったのだから、世の中は何が起こるか分からない。
 『戦士の休息』とは、1962年にブリジッド・バルドーが主演した映画のタイ トルから取られている。この洒脱なタイトルの本はジブリの機関誌「熱風」で連載していた落合の映画エッセイをまとめ、昨年出版されたものだ。
 ドラゴンズの優勝祝勝会で偶然出会った筋金入りの中日ファンである鈴木敏夫プロデューサーが監督に声を掛けたところから始まったというこの企画。落合博満自身が野球部をさぼって映画館に入り浸っていた話など、映画と彼の来歴を往来しながら語られる映画評は、正直で頷くところも多い。
「映画との付き合いは野球よりも長い」という落合の言葉は、リップサービスではなく、どうやら動かしがたい事実のようだ。三船敏郎の話題から、『コクリコ坂から』、チャップリンもあれば、野球映画に関する厳しい声などなど、映画愛と真っ直ぐな言葉がそのままオブラートに包まれず書かれている。『ドラゴン・タトゥーの女』で知られる「ミレニアム」シリーズのハリウッド版とスウェーデン版の見比べ評などはかなり的確で、映画そのものの完成度だけでなく、自身が映画に何を求めているのかまで鑑みた上での文章になっており、落合の本気度が伺えた。
 落合自身はプロ野球の現場で「観客」と「ファン」を分けて考えているらしいが、そのどちらにも訴求する彼流の哲学を貫く姿勢は、映画批評でも同様だった。まあ、実際に手にとってください。落合博満という人間の、ものごとを深めていこうとする好奇心の根っこに触れることができます。

追伸:彼の園子温評も必読です。