『タンタンの冒険 ペーパーバック版 24冊セット』エルジェ 著/川口恵子 訳

 ベルギーのマンガ家、エルジェの「タンタンの冒険」シリーズ。1929年に『タンタン、ソビエトへ』が、ベルギーの子供新聞に掲載されて以来、世界中で人気を博し、次々と新作が発表されては読み継がれた作品だ。
 その「タンタン」がなぜ「バルテュス」テーマの今週の原稿で紹介されるのかというと…、バルテュス先生、じつは「タンタン」のことが大好きだったみたいです。
 彼の娘の春美が小さな頃によく読み聞かせていたという、この「タンタン」シリーズ。友人のジャコメッティとは「マティスよりよく描いている」と話し合っていたという逸話もあるようだ。今週紹介したもう1冊の『バルテュス 猫とアトリエ』では、何度も読み返したのであろうボロボロになった『タンタンの冒険 黒い島のひみつ』の写真を見ることもできる。幾度も読み重ねられた本だけに宿る痕跡が、その写真には確かに写っている。
 また、バルテュスが最晩年に受けたインタビューでは、芸術について問われ、「私は芸術家という言葉が嫌いだ。芸術家を名乗る者たちは創造という言葉をよく口にするが、その言葉自体きざなものだ。漫画の『タンタン』の中に出てくるハドック船長が相手を罵倒するとき、いつも『芸術家め!』と言うが、これは愉快だ」と答えたそうだ。芸術を介して、独自の「祈り」を追求した唯一無二の彼らしい解答だと思う。
 というわけで「タンタンの冒険」シリーズ。久しく手に取っていないという方も多いと思いますが、一昨年に発売した全24巻セットを大人買いというのを思い切ってお薦めします。かなり重いが、BOXもかわいいし、何より次の100年も読み継げる作品ですもの。バルテュスもいうのだから、間違いない。