『未来いそっぷ』星新一 著

 ショートショートといわれて、星新一を取りあげないわけにはいかない。短い物語のなかに起承転結や、読者をあっと驚かせる仕掛け、キャラクターへの愛着、社会へのアイロニーなど、多層な世界を簡単につくってしまう(ようにみえる)ショートショート界における永遠のキングが彼だ。
 この『未来いそっぷ』には、「イソップ寓話」を星新一なりにリメイクしたショートショート作品が収録されている。ベースとなる話を誰でも知っているだけに、星の創作アイデアがどう湧き出し、どうまとめられるのかが客観視しやすい。
 19世紀ドイツロマン主義の影響を受け、民間伝承を編纂しなおしたグリム童話や、同じく19世紀のデンマークで貧困と挫折と失恋に喘いでいたアンデルセンの創作童話とイソップ童話は出自がまったく違う。紀元前6世紀のギリシアでアイソーポス(イソップ)という奴隷がつくった寓話だとされているイソップ寓話は、神話世界の話。SFの旗手である星には、料理しやすい題材が多かったのだろう。「アリとキリギリス」や「ウサギとカメ」などが、これでもかという程、星新一風になってしまって……。繊細さと豪快さをあわせもった料理人の仕事、とくと堪能させてもらいました。