『鼻ほじり論序説』ローランド・フリケット 著/難波道明 訳

 誰もがあるはずである。後ろを向いて、鼻をほじほじしたことが。
 この本は『鼻ほじり論序説』といって、「セックスより愉しく、しかもリスクなし!」という鼻ほじり行為に関して、その歴史から基本的スキル、鼻ほじり豆知識や、アートや文学界での鼻ほじりを網羅した決定的1冊だ!
 なんていうと、人類学や心理学、動物行動学なんかと絡み合いながら、鼻ほじりという、なんてことない行為を学術的にとりあげていると勘違いする生真面目な方がいるかもしれない。だから、これだけはいっておこう。この本、真剣には取り合わないで下さい。
 ともあれ、この本の著者ローランド・フリケットと翻訳の難波道明の仕事には頭が下がる。これだけくだらないことを、ものすごく真剣に、丁寧な図版も添えながら、紹介するのだから。
『平行植物』や『鼻行類』が、学術体系に対する伝説的パロディであるのに比べ、この『鼻ほじり論序説』は、なんというかもっと一発芸的だ。例えば、第2章では寄せられた鼻ほじりに関する質問に答えていくのだが、「指はどれくらいの深さまで突っ込んでいいのですか?」という問いに対して、著者はこう答える。「一般的に言って、指を深く突っ込んだときに自分の名前が思い出せないようであれば、それはやりすぎといえるだろう」。
 あー、くだらない。そして、そんな徹底的に阿呆な時間が僕たちの日常には必要なのだ。鼻ほじりと同じように。