『雑誌の人格』能町みね子 著

 雑誌とは、社会に巻き起こるムーブメントの初期衝動を孕んでいて、じつに多くの人々を呼び集めていた。というのは過去の話??
 そうした力は失われてしまったと嘆かれて久しい昨今だけど、この『雑誌の人格』は、まだまだそれが十二分に楽しい紙束だということを教えてくれるのだ。
 能町みね子が雑誌の中心的読者であろう人間を面白おかしくプロファイルするこの企画。たしかに皆で共有できるイメージがなくなってきた今では、雑誌を読む人も嗜好に合わせてどんどんと細分化されていっている。そうした細分化の果てを、プロファイリングという形で描き出そうとしていく妄想の爆発が、本書の一番の読みどころだ。
 たとえば、『ゲイナー』の読者は「オシャレを知らない男子学生から羽化した成り上がり志向の強い社会人デビュー組。」なのだとか。『VERY』は、「家族という生活基盤を大事にする「ママ」文化の中心的存在。」だそうで。イラストも添えて、細かく紹介されるゲイナー君やヴェリィさんをみて、誰かはドキリとするのかな?
 いまだに、マーケティングの理論が乱暴にも世の中で幅を利かせているから、実在しないはずの「○○層」みたいな架空の人間を相手に必死でものを売ったり、サービスを考えたりしてきた苦い経験をお持ちの人は多いはずだ。けれど、それは幻想だったと開き直った果てに、妄想力を持って架空のペルソナに接すると、不思議と愛着も持ててくる。
 少なくとも、著者の能町はどんなに毒づきながら各雑誌のプロファイルをしていても、最終的にはその架空の読者や雑誌そのものを十分たのしんでいるように見える。なんだ、雑誌ってまだ僕らの想像力に働きかけるエネルギーがあるんだ。不思議と読後は爽やかでした。