『ナチュラル・ナビゲーション 道具を使わずに旅をする方法』トリスタン・グーリー 著/屋代通子 訳

 格好をつけて家出をしたところで、どこに向かうべきかわからないのは、ちとダサい。方向が定まらないとき、近ごろの僕らはGPS機能付きの携帯端末を使うけれど、電源切れゆえの出戻りなどという状況は避けたいところだ。そもそも、家出人はコンセントに甘えていてはいけないのではないか。
 ということで、周りの自然と対話しながら、自らの進むべき道筋を見つけ出すために、こんな本をどうぞ。『ナチュラル・ナビゲーション 道具を使わずに旅をする方法』。著者のトリスタン・グーリーは探検家でもあるし、イギリス最大の旅行会社「Trailfinders」の副会長でもある。あらゆる方向から旅を見渡してきた彼が、辿りついたのがこんな旅のやり方だったのだ。
 海図も羅針盤もなしに大海原へと飛び出したかつての冒険者たちは、星の位置と島影との関係をたよりに航路を見いだしていた。というのは皆がイメージできるナチュラル・ナビゲーションだろう。けれど、月星だけでなく、太陽や風や地形、動物の動きなど全ての周辺環境は、僕らの道を指し示すヒントになるのだと、この本は雄弁に語る。
 しかも、自然物だけでなく、街の人の流れや教会伽藍など宗教建築の建ち方などもナビゲーション・ソースとなるというから驚いた。ほかにも、殆どのテニスコートが直射日光に照らされないよう南北方向につくられる話なども合点がいった。読中は「なるほど」と頷くことばかりだ。
 つまり、自然の事象であれ、人工物であれ、何かがある状態でいることには、全て理由があるのだ。周囲を見渡し、なぜ?なぜ?と自問自答を繰り返すことが、ナチュラル・ナビゲーションの根幹なのだろう。
 さて、電源オフで家出する気になってきましたか?