『大冒険時代 世界が驚異に満ちていたころ 50の傑作探検記』マーク・ジェンキンズ(ナショナル・ジオグラフィック歴史研究員)編

「ナショナル・ジオグラフィック」といえば、誰もが黄色い枠の表紙の雑誌をすぐに思い浮かべることができるだろう。本書はそんな「ナショナル・ジオグラフィック」に掲載された幾つもの冒険譚が集められたものだが、なにが面白いのかというと、どのエッセイもだいたい 100 年から 50 年前のものなのだ。
 つまり旅行が大衆化する以前の、「旅の黄金時代の黄昏を代表する」時代のエッセイ。グローバリズムによって世界が画一化するずっと前には、今よりも大きなスリルや浪漫が旅にはあったようだ。
 アメリカ大統領を退任した後、東アフリカのサヴァンナに向かったセオドア・ルーズヴェルト。現地人には「ブワナ・トウンボ(腹でか旦那)」と呼ばれた彼は、その地で何を発見したのか?
 大海原を旅する「ナショナル・ジオグラフィック」の船長といえば、ぶっきらぼうで筋骨たくましいオーストラリア人、アラン・J・ヴィラーズ。風と波しぶきで人生を磨き、一方の陸地では車のハンドルさえ握らなかったという生粋の海の男は、帆船でホーン岬を回り、ヨーロッパまで小麦を届けた荒々しい航海の軌跡を描く。船乗りはいつだって縁起をかつぐものだが、13 人という不吉な数の水夫を乗せてしまったその帆船。果たしてどんな顛末を辿るのか?
 この分厚くて装幀も美しい一冊には、未知に驚喜し、なんとかそれを伝えたいと望んだ先人たちの魂が定着している。海の旅も、陸の旅も、空の旅も、彼らの礎の上に、僕らは旅をしているのだ。