『十皿の料理 コート・ドール』斉須政雄 著

 なんでも盟友江口宏志は、ユトレヒトを辞めてドイツに行くという。しかも本屋ではなく、蒸留を学びに行くのだとか。なんだかよくわからんが、とにかく応援するぞ。
 そんな江口さんに餞別的な1冊として斉須政雄の『十皿の料理』を紹介したい。これは日本のフランス料理界を牽引する斉須が、フランス修行時代に血肉化した10の料理を当時のエピソードも交えて語り下ろしたもの。そして、食べ物をつくることがこんなにも愉しく、ドラマティックで、尊いことだと教えてくれた個人的にも思い出深い1冊だ。
 なかでも江口さんに是非読んでもらいたいのが、「しそのスープ」を発案した8つ目の章。そして、斉須がフランスで転々と修行したレストランについて語る「この十皿の料理は、僕の十二年間のフランスの結実です」かな。どちらも、アウェイ感に充ちた異国の地で彼がどのように生き延びたのかが書いてある。僕も少しだけ外国で暮らしたことがあるからわかるけど、間違いなく、差別や習慣の違いで大変な思いをすることになるのでしょう、ドイツの江口さんも。そんな時に先人はどう戦ったのか を知っておくのは悪くないんじゃないかなと思う。ちなみに斉須シェフは喧嘩をした相手にアスパラを投げつけてました。
 斉須がフランスで過ごした12年間に、彼は多くの人と出会い沢山の影響を受けた。そして、その日々の中で彼が得た最も大切な宝物は「なにごともやってみなくては分からん」ということらしい。江口さんの蒸留道が、愉快な道程になりますように。