『写真集 鳥の巣』シャーロン・ビールズ 著

 鳥の巣の写真集と聞いて、面白そうだと思えるのは鳥愛好家だけかもしれない。けれど、数ページぱらぱらめくってみると、この写真集で紹介される鳥の巣がじつに美しく彫刻的だと、どんな読者だって気づくことだろう。
 サンフランシスコ在住の女性写真家シャーロン・ビールズがスタジオ撮影した50種の鳥の50の巣。見開き2ページで1種類の巣の写真と鳥の生態をしっかり知ることができる。漆黒から浮かび上がる宝石のように撮られたそれは、不思議な魅力で我々に迫る。オレンジムクドリモドキの巣は長い藁草とシュロの葉、馬の毛などを編み込んだクジャクの羽のような優雅な巣。一方、虹色の羽を持つアンナハチドリは、カモフラージュのため苔や地位類を周りに付着させ、緑色のボールのような巣をつくる。
 彼らは設計図もなしに遺伝子に組み込まれた本能として巣をつくっているだけ。なのに、こんなにも多種多様で見事な巣ができあがる秘密はどこにあるのか不思議で仕方がない。ある種の人にも通じる美意識を持ち合わせているのではないかと考えてしまう。
 ちなみになぜこの本が「今、江口さんに贈る2冊」というテーマでの選書かを書き忘れていた。その心は、「ドイツで困ったらいつでも帰ってこい!」というところですかね。まあ、江口さんの帰巣本能がどこに向かっているのかは正確に知らないのですが、よい旅立ちを祈念します。もちろん、出発前にこの連載を本にまとめる作業をしてもらわないと困りますが。