陽炎座

三度びお会いして、
四度目の逢瀬は恋になります。
死なねばなりません。
それでもお会いしたいと思うのです。


美しい女たちの愛と憎しみの渦に引き込まれ翻弄されながら、現世ともあの世ともつかない妖しい世界をさまよい歩く主人公に、鈴木清順監督の大ファンだったという松田優作を迎える。<清順美学>と豪華な俳優陣との邂逅によって、より妖艶に、より耽美な映像世界が繰り広げられている。“浪漫三部作”の第二作。
美しい女たちの愛と憎しみの渦に翻弄される男を演じた松田優作には、他の出演映画では見ることが出来ない、弱い男ゆえの魅力に満ち溢れている。原作はロマンチシズムを代表する泉鏡花の同名小説。『ツィゴイネルワイゼン』に引き続き田中陽造が脚本を担当している。


Story
大正末年の1926年。新派の劇作家・松崎春孤(松田優作)は落とした付け文が縁で品子(大楠道代)という美しい女に会う。その後も偶然というには出来すぎたかたちで三度会う不思議を、パトロンの玉脇(中村嘉葎雄)に話す。しかし、品子と三度目に会い一夜をともにした部屋が、玉脇の邸宅の一室とそっくり同じであることを発見してしまう。そんなとき、松崎の前にもう一人の美女イネ(楠田枝里子)が現れ「玉脇の妻です」と名乗るが、イネは重い病気で松崎が出会う直前に病院で息を引き取っていた。
「金沢、夕月楼にてお待ち申し候」という品子からの手紙に誘い出された松崎だが、汽車には玉脇も乗っており、亭主持ちの女と若い愛人の心中を見に行くという。金沢でめぐり会えた品子は、松崎に手紙を出した憶えはないという。「あれは夢の中で書いたもので、おイネさんが手紙にしたのです」
品子との心中をそそのかす玉脇を逃れた松崎は、アナーキストの和田(原田芳雄)と知りあい、老人形師(大友柳太朗)のもとで博多人形裏返しの世界を覗く。松崎は死後の世界を目撃して衝撃を受け、迷宮をさ迷い、夢うつつのなかでイネと会う。そして、幻聴のような祭り囃子に導かれて奇妙な芝居小屋・陽炎座へ。
そこは、子供たちの不思議な芝居と、品子、イネ、玉脇の妖しい人間関係が絡みあうあやかしの世界であった。


*1981年度 キネマ旬報ベストテン日本映画第3位
*第27回キネマ旬報賞
助演男優賞(中村嘉葎雄)/助演女優賞(加賀まりこ)受賞
*第5回日本アカデミー賞
最優秀助演男優賞(中村嘉葎雄)/優秀脚本賞(田中陽造)/優秀助演女優賞(加賀まりこ)/優秀撮影賞(永塚一栄)/優秀照明賞(大西美津男)受賞

出演/松田優作、大楠道代、中村嘉葎雄、楠田枝里子、原田芳雄、加賀まりこ、大友柳太朗、麿赤児

監督/鈴木清順
原作/泉鏡花 脚本/田中陽造 撮影/永塚一栄 照明/大西美津男 美術/池谷仙克
録音/橋本文雄 音楽監督/河内紀 編集/鈴木晄 記録/内田絢子 製作/荒戸源次郎
1981年/シネマ・プラセット/139分/スタンダード