鈴木清順監督“浪漫三部作”リバイバル公開記念!『陽炎座』トークショーレポート

1月28日(土)に行いました、製作プロデューサー・荒戸源次郎氏による『陽炎座』のトークショーレポートです。(聞き手:リトルモア代表・孫家邦)
 
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〈荒戸氏=A、孫=S〉
 
S:今日は荒戸源次郎さんから、いまみなさんにご覧いただいた『陽炎座』に関してのお話をしていただきます。
A:私は、10年ぶりくらいに今日スクリーンで観たんですけど、隣の隣に座っている人がずっとイビキかいていて…(笑)。何かちょっと嬉しかったです(笑)。
S:私は、優作さんが亡くなった時に観てその時以来ぶりにスクリーンで観ました。
凄まじい傑作だと、今日観て改めて思いましたね。
A:いや、よくこんなもん作ったなと思うよ。バカだよね(笑)。やりたい放題だよね。
S:本当そうですね。
A:いい大人が、ひとりの人間の妄想に付き合っている。大人が子供みたいになって無心にやってるよね。ちょっとドキドキした。久しぶりに。ただ、となりでイビキ聞こえるしね(笑)。悪くないなあと思って。やりたい放題だね、本当にね。
S:(笑)
A:(やりたかったことの)実現率がすごく高いと思うね。撮影中、いろいろ考えるじゃない。時間やお金の面で難しくなってくると。だけどそれを諦めずにやったよね。本当いろんなこと思い出したよ。少し胸が、恥ずかしいけど胸が熱くなった。
これが公開して、私の一回目の破綻になったんですけど(笑)。
S:おめでとうございます(笑)。
A:いえいえ(笑)。でもこの『陽炎座』は、こんな映画ができたんだから、会社の一つくらいひっくり返って当然だと思えたもんね。
S:納得ができたと(笑)。
 
S:でもこれを実現させるとは、気の狂ったスタッフたちですね。
永塚さんと大西さんの撮影・照明のコンビが、『ツィゴイネルワイゼン』でものすごく世間が褒めてくださった時にすごくびっくりされて、『陽炎座』の撮影に入る前に、一言プロデューサー(荒戸さん)にお話があったとお聞きしましたが。
A:永塚さんには、、『ツィゴイネルワイゼン』の時はあんな風になると思わなかった、ちょっと手を抜きま
した(笑)って。今度はちゃんとやります、って言われたんです。えらいことになっちゃったんだけどさ。だけど、まぁ、楽しかったよね。
S:『陽炎座』はオールアフレコですよね。
A:『ツィゴイネルワイゼン』も『陽炎座』もアフレコですね。
S:これはでも、シンクロにしていない凄みというか…。
A:まあ一長一短ですがね。俳優さんは大変だよね。2度やんなきゃいけないからね。でもみんな応じてくれたからよかったけどさ。
S:音響効果がすごいですよね。あと、河内さん(音楽監督)の仕事が『ツィゴイネルワイゼン』に続いて冴えに冴えてますね。
A:音楽っていうか仕上げの段階の音について全部やってくれました。いいですね。
S:黒人霊歌というか、
A:葬式の時の…。
S:ああいうものは、どういう発想ででてくるんですか?提案として河内さんからあったんですか?
A:提案もへったくれもないよなぁ。監督は音楽に興味ないもん(笑)。だから任せっぱなし。最後のお囃子のところなんかは、河内さんの貯めていたコレクションから出していた。
S:音楽の足らないところは新たに演奏で録りおろしたんですよね。JAZZの冨樫さんの名前とか出てきてますもんね。やっぱり画もすごいし、音もすごい。
A:でも眠くなる人もいるから(笑)。
S:でもワンシーンワンシーンごとの仕掛けの多さ、必ずなにかをやっていますよね。
A:流しているシーンはひとつもありませんね。そりゃ会社潰れるわな…(笑)。
S:撮影はどのくらいかかったんですか?
A:2ヶ月くらいかかったかな…。
S:『陽炎座』の撮影場所は?
A:その頃鎌倉にいたから鎌倉と、後半の芝居小屋のセットは(埼玉県の)上福岡に建てて撮影しました。そこにオープン組みましたから。
S:金沢のシーンは、実際に金沢で撮影されたんですか?
A:いや、金沢には行っていないんだよね。一部、ちょっとは行ったのかな。金沢は『夢二』だよね。
S:美術のセットもすごいですね。
A:好き好きだけど俺はいい思い出無い(笑)。
S:すごいお金を使っているという…?
A:そうだね。『夢二』の時の美術もそうだっただろ。
S:すみません(笑)…。
A:謝って欲しいわ(笑)。
 
A:でも、優作さんの、最後の目つきはすごいね。死んだ魚みたいな目をしているよね。
S:その後の優作さんの、ある種の芝居につながっていますよね。
A:このあと、『家族ゲーム』で評価されるんだけれども。まあターニングポイントだよね。
S:とても妙なことをさせられているじゃないですか。現場では、清順さんから細かな説明もなく、「そこで電車やってください」とか言われてるんでしょうか。
A:細かな説明は全然しないんだよ。脚本があるんだから、それで考えてきた通り好きにやって下さいと。あーしろこーしろって清順さんはあまり言わないよ。
S:どういう経緯で松田優作さんを誘おうと?
A:東京タワーの下に造ったエアドームで『ツィゴイネルワイゼン』の上映やってたときに、優作さんが観に来たんだよ。オートバイで。それで、その日に決めた。
S:役柄の松崎とおなじように、妙なところに迷いこんでて困っている感じが、もちろんお芝居としての凄みなんですが、とても良く現れていますよね。
A:まあ、清順さんの映画を好きだったし、知ってはいたから。撮影を楽しもうと思っているんだけど、楽しめないというかね。ただ撮影現場では一回も摩擦は無かったね。
キャスティングはもう30年経ったからもう言っても良いと思うけど。品子役は、吉永小百合さんにお願いしたんです。1ヶ月くらい待って、結局、吉永さんの決心がつかなかった。そこで、大楠さんに頼むときにちゃんと言ったよ。そしたら「小百合ちゃんだったらいい」と。全部本当のことを言って、引き受けてもらった。だから良かったんだね。大楠さんは良くやっているね。
S:素晴らしいですよね。
A:人形振りの場面とか、あの人で無いと出来ないよね。反射神経凄いからね。綺麗だしね。
あとね、中村嘉葎雄さんの役はね、勝新太郎さんだった。撮影終わってから勝さんから電話掛かってきて、「あの役やろうかな」って(笑)。
S:でもそう考えると、はじめに予定していた方が出来なくて、あとで決まった方たちがものすごく良いですね。
A:あれは、キャスティングでいろいろひっくり返してやろうと思ってね。だから、大楠さんにしろ、中村嘉葎雄さんにしろ、素晴らしいですよ。
S:あと、イネのキャスティングが当時は話題となりましたよね。
A:楠田枝里子さんには、『ツィゴイネルワイゼン』のキャンペーンでお会いしたのかな。
S:あの時の楠田さんは、テレビの司会をやられたり活躍されてましたよね。
あと、大友柳太朗さんですね。背筋がすっとしていて、本当にもう美しく映っていますね。
A:最初は、清順さんは、辰巳柳太郎さんにしてくれと言った。
S:ああ、(大友さんの)師匠ですね。
A:そしたら、新国劇(の舞台)が当時あったから、(代わりに)島田正吾さんじゃダメかと言ってくれたのね。俺も島田正吾さんで良いんじゃないかと思ったから、清順さんに聞いたら「いや、辰巳さんじゃないとだめだ」と。
S:自分はどちらが好きだ、というのがハッキリしているんですね。
 
S:まあ、とにかく、スタッフワークも素晴らしいし、何もかも素晴らしい。
ちゃんとつながっていますね、『夢二』と。金沢も含め。
A:10年経ってるんですけどね。
 
S:今回、久しぶりにいろいろお話を聞かせて頂いて、結局荒戸さんにとって、清順監督は作家として、人として、何なんですかね?
A:えらい!えらいなぁと思う。でも一緒にやりたくないなぁと(笑)。
S:それ、毎回言っていますよ(笑)。
A:あまりにも、えらすぎて一緒にやるもんじゃないと、今は思う。3回もやってるんだけどね。
S:でもこの3部作が残っていることは、荒戸さんの功績だし、誇らしいところはありますよね。
A:『陽炎座』作れたのは誇りです。
好きかと言われると考えちゃうけど、よくこんなもの出来たなと。
まあ、なかなか無い映画ですから、ご覧になって良かったって、言いたいね。
ありがとうございました。
 


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