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●● まずはお読みください! ●● 『マリアさま』試し読みはコチラより ●● SP盤(レコード)愛好家のいしいしんじさんが選曲する“『マリアさま』のためのサウンドトラック”も公開! → http://www.littlemore.co.jp/maria-sama/ いしいしんじ 3年ぶりの小説集―― 『マリアさま』 2000年~2018年のあいだ、様々な媒体で書きためられた短篇・掌篇より、「新生」をテーマに、27篇、選りすぐりました。 - - - 森羅万象きらめく、 片隅で掬われた、って、 これは、そんなおはなし。 - - - 動かなくなったトビをぷいと吐きすて、私は再び身構えました。ばさばさとトビたちがはばたく気配がします。私は、もう見えない目でにらみつける。 ――「犬のたましい」 本日は、祖父、晴臣をしのぶ会にお集まりいただき、まことにありがとうございます。孫の新子と申します。 ――「とってください」 ごほり、ごほり、と濁った咳をティッシュペーパーでうけ、いいかい、と目線でたずね、こちらがうなずくとてのひらの上で紙をひらいてみせた。溶けたチョコレートのような粒々がそこにあった。「土だよ」 ――「土」 「こんばん、西の山へいってみないか」横顔をむけたまませせらぎは黙っている。ゴトリ、ゴトリ、水車がまわり、だんだんとそれは、足もとの地面がゆっくり回転する音にきこえだした。せせらぎの手は砧を撫でつづけ、俺はふうと息をつき、川辺を離れた。 ――「せせらぎ」 今日みたいにドライブがてら、「おそと」で音を拾って歩く姿を、わたしは物心ついたときから見なれている。十代半ばからは、京町家に泊まりにいった翌朝には、ほぼ決まってわたしを連れ、ケンチさんは「おそと」へでかけた。まるで、かたく閉じかけていたわたしの窓を、外いっぱいにひらくように。 ――「自然と、聞こえてくる音」 虎は身を揺らせながら銀座通りを歩いている。歩行者天国ならぬ虎天国である。さすが銀座通りだ、と思う。 ――「虎天国」 他、全27篇。「物語」の力、「物語」を読む時間を、大切に思える、一冊です。 [著者プロフィール] いしいしんじ 1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。 2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。 そのほか『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『四とそれ以上の国』『海と山のピアノ』など著書多数。 趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。 著者:いしいしんじ 装幀・装画:有山達也 定価:本体価格1500円+税 ISBN 978-4-89815-510-3 2019年発行 仕様[A5判/260ページ/並製] ● サイン本入荷! いしいしんじさん直筆のサイン本が入荷しました! ただいま当Webサイトから『マリアさま』をお買い上げいただいたお客様には、サイン本をお届けいたします。 ※サイン本は数量に限りがございますので、ご希望の方はお早目にご購入ください。 ● 購入特典 『マリアさま』特製メッセージカード(非売品)プレゼント! ただいま当Webサイトから『マリアさま』をお買い上げいただいたお客様に特製メッセージカード(非売品)をプレゼントいたします。 ※購入特典は数量に限りがございますので、ご希望の方はお早目にご購入ください。