『サッカー戦術クロニクルⅡ 消えた戦術と現代サッカーを読む』西部謙司 著

 まさか「ギリシャくらいにだったら勝てるんじゃないか」と思っていません?サッカー日本代表がブラジルW杯の2戦目で当たるギリシャ。彼らを侮るのは、じつに危険なことだと、この本を読みながら肝に銘じましょう。
 著者の西部謙司は、日本で指折りのサッカージャーナリスト。彼がサッカーにおける戦術の流れをまとめたものがこの「戦術クロニクルシリーズ」である。ある戦術が隆盛を極めれば、それを打ち破ろうとする誰かが新しい戦術をあみだす。「カウンターアタック」、「マンツーマン」、「ロングボール」など、誰もが耳にしたことのある戦術が興った理由を明らかにしながら、それらがどんな変遷をたどったのかを読みすすめてみると、日本史の教科書をかじりつきながら読んでいたあの頃を思いだす。それは、まさに群雄割拠。盛者必衰。戦国時代に武将たちが繰り広げていた国盗り合戦さながらの、頭脳戦、技量戦がこのフットボールの本にも記されているのだ。
 ギリシャは、本書の中で語られる「マンツーマン」ディフェンスの主役級。奇蹟の優勝と呼ばれたEURO2004を制覇したギリシャが、どれだけ潔く屈強な守備的戦術を採用していたのかよくわかる。詳しくは読んでいただきたいが、徹底的なマンマーク+リベロシステムを採ったことで、観る者はつまらないがとにかく点は取られないギリシャ。そして、攻撃は捨てる。EURO決勝後には現代のサッカー監督の中で最もコピーライト能力に長けるジョゼ・モウリーニョが「おめでとうギリシャ、ギリシャはギリシャ人のためだけにプレーした。他の人々はどうでもよかった。」という言葉を残したが、なりふり構わず勝負に賭ける冷徹をギリシャのチームが持っていることを世界中に示した。そう、ギリシャを侮ってはいけない!