『神々と人々の日々』増田こうすけ 著

 なーんにも考えたくない時間というのが誰にでもある。そんな時である、僕が増田こうすけのマンガを手に取るのは。
 彼の『ギャグマンガ日和』でも歴史的な偉人たちが、おそろしくくだらないやりとりに終始するという爆笑もの(いや、持続するクスクス笑いかもしれない)のストーリーが多々あったのだが、『神々と人々の日々』では、ギリシャの神々が主人公。かかとを蹴られただけで即死寸前のアキレウスや、海の動物園の経営に悩むポセイドン、道端に落ちていたエロ本を詮索する愛の神・エロスなど、おなじみの神々も増田こうすけの手にかかると、ここまで「とほほ」な存在になる。
 偉人や神々に対して僕らがもっている崇高なイメージを逆手にとるだけでなく、実際のギリシャ神話で語られるエピソードもちゃーんとギャグマンガとして換骨奪胎。たしかに、実際のギリシャ神話にも、突っ込みどころ満載の話はたくさんある。
 例えば、海の神テティスが赤子だったアキレウスを冥界のステュクス河に浸けて不死身にする際、彼女がつかんでいたかかと部分だけが水に浸からず弱点となったというストーリー。「かかとを持っていても、絶対濡れてるはずじゃん」とか、「かかとを持って逆さに吊るした赤ん坊を河に沈めるって、どんな親なん?」など、誰もが「おいおい」と思っていたはず。けれど、相手はギリシャ神話、言えなかったのです。
 そんな風に誰もが「言わなかった」部分にも果敢にも踏み込み、ここまでくだらなくも愉しいマンガにしてしまう増田こうすけ、恐るべし。一話完結型の『ギャグマンガ日和』に比べ、「ギリシャ町」を舞台にしたこの作品で、どんな笑いが生み出されるのか、続きが楽しみで仕方がない。